ドラッグストアで「窃盗団の大量万引き」増加中! 万引きGメン連れ去り事件も発生、死と隣り合わせの現場
極めて冷静に対応され、我に返った私は、店長と2人で防犯カメラの映像から逃げた犯人の写真を探し出して抽出。続けて、駐車場に設置された防犯カメラの映像を確認していると、捜査と書かれた腕章をつけた刑事を先頭に、複数の警察官が事務所に入ってきました。抽出したばかりの写真を渡して、探し当てた逃走車の映像を見てもらうと、一通りの状況を確認した刑事が、無線で情報を拡散するよう警察官に指示を出します。
「至急、至急! 警備員連れ去りの件、被疑車両はシルバーのワンボックス、ナンバーは……」
いままでに経験したことがないほどの不安に襲われ、生きた心地のしないまま事情説明を続けていると、さらわれていた福くんが足を引きずりながら事務所に入ってきました。
「ちょっと、あなた大丈夫? なんで連絡しないのよ」
「車から蹴り落とされちゃいました。どこかでスマホを落としたみたいで、どうしようもなかったんですよ。途中、パトカーにも手を振ってみたんですけど、気付いてもらえなくて」
話によれば、ワンボックス車内で揉み合った末、走行中の車内から蹴り落とされ、そのまま逃げられてしまったということでした。車内には、3人の外国人が乗っていたそうで、その顔つきからベトナム人に違いないと話しています。一通りの状況確認を終えて、警察官に救急車を手配させた刑事が、福くんに言いました。
「あんた、死ななくてよかったな」
結局、福くんのスマートフォンを遠隔で検索したところ、犯人の車に放置されていることが判明。それが捜査の端緒となって、この日のうちに犯人は捕まり、盗んだ商品も回収されました。犯人は、3人ともベトナム人。そのうちの2人は、オーバーステイで検挙されることになり、万引き(事後強盗)の調べはしないまま入国管理局に送られます。
診察の結果、幸いにも足と膝、顔の打撲で済んだ福くんでしたが、この日を最後に退職してしまいました。退職理由を聞けば、命の安売りはしたくないとのことで、何も言い返せずに別れを告げた次第です。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)