ドラッグストアで「窃盗団の大量万引き」増加中! 万引きGメン連れ去り事件も発生、死と隣り合わせの現場
客足の少ない店内で、なるべく動かないように身を潜めながら人の出入りを中心に警戒していると、夕方になって若い外国人の男が入ってきました。おそらくは20代前半くらいでしょうか。袋やバッグなどは持っておらず、一見すると一般客に見えますが、女性用の化粧品売場に直行したことで強度の警戒対象と化しました。犯行に至るとすれば、カゴヌケや持ち出しの手口を用いると想定でき、外で仲間が待機している可能性が高まります。
「仲間がいるかもしれないから、よく確認して。確認したら、出口付近で待機ね」
店外のことは福くんに任せて、1人店内に残って化粧品売場を一巡する男の行動を見守れば、高額な化粧品や避妊具、サプリメントなどの店頭在庫量を確認しているようです。すると、突然に風除室まで引き返した男は、2つのカゴをカートにのせて、再度売場に戻ってきました。犯行に至ることを確信して、店内の状況をメールで福くんに伝えます。
わずかな時間に、いくつかの商品棚を空にして見せた男は、2つのカゴに商品をあふれさせると、まさに一目散と行った体で、出口に向かって走り出しました。出口を通過する際、防犯ゲートが鳴りましたが、店員さんが反応することはありません。発報に怯むことなく、出口を駆け抜けて外に出た男の跡を追いかけると、駐車場に停まるシルバーのワンボックス車の後部ドアに手を伸ばしているのが見えました。スライドドアを開いて、カゴを車内に放り込んだ男の後方から、福くんが勢いよく掴みかかります。
(柔道初段だっていうし、大丈夫よね)
そう信じて駆け寄ると、後部座席から仲間の男が飛び出してきて、2人を引き離すべく福くんの手をつねりました。それでも離さないとみるや、間に割って入って、車内に押し込むように犯人の背中を押し始めます。揉み合っているうち、犯人を掴んだ手を離さないでいた福くんも、引きずられるようにして車内に吸い込まれてしまいました。
「ちょっと、待って! 止まりなさい!」
自分でも驚くほどの大きな声で叫びましたが、止まるはずありません。急発進して、猛スピードで走り去るワンボックス車を追いかけながら、110番通報して車の色やナンバーを警察に伝えた私は、事務所に緊急連絡を入れながら店舗に戻りました。ひどく動揺していたのでしょう。体の震えが収まらず、声を振るわせて状況を説明する私に、店長が言います。
「これは、警察を信じるしかないですね。まずは、犯人の写真を用意して、警察の到着を待ちましょう」