コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

皇后さま、新興宗教の“教祖”に心酔!? 宮内庁が問題視した「教団」と、皇室の知られざる事実

2021/03/20 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江 そうです。でも不可思議なことですが、河原さんいわく、入江氏の怒りは松園英子女官には向かわなかったようです。松園さんは入江氏のお気に入りだったとか。

 さて、失くしものを超遠隔霊視で発見した椿教祖さんに皇后さまはすっかり魅了されてしまったようです。その抜群の霊力の込められたサケの切り身などを、同じく信者だった松園英子女官経由で宮中に運び込み、皇后さまはお食べになっていたようですね。

 しかし皇后さまが、この手の宗教団体に熱心に接触していたのも、宮中の侍医(医師)が治せない、昭和天皇の顔面痙攣などの症状を椿教祖の祈祷で和らげたくて……という願いがあったがゆえのようです。久邇正子さんの証言によると、ほかに昆布やウニ、スジコなどにも椿教祖が霊力を込めて献上していたそうです(「女性セブン」1999年1月1日号)。

――霊力のこもっているアイテムが、海鮮物なのが独特ですね(笑)

堀江 日本各地からの皇室への献上物が書かれた、平安時代初期の書物『延喜式』にもスジコ(正確にはスジコを孕んだサケ)が、「内子鮭(こごもりのさけ)」として登場するので、献上品については、『延喜式』にインスパイアされているのかもしれません。

 ただ、これはすべての霊能者にいえることかもしれませんが、「大真協会」の椿教祖の治癒の祈祷に怪しい部分もなかったわけではないのです。また、こういう宗教に皇后さまが本当に入信までしていたかどうかはグレーゾーンなのですが、傾斜していたことは事実なのですね。

 入江氏はそんな皇后さまの行動を警戒しており、調査をしていたけれど、もともと彼の中では魔女である今城誼子さん経由だという証言が得られると、その真偽を追究することなく、一気に彼女を悪者に仕立て上げ、宮中から追放するという荒っぽい手段に出たようですね。

――要するに今城さんは、皇后さまの新興宗教に接近という“問題行動”を煽動している人物として、スケープゴートにされたということですか?

堀江 そうですね。祭祀を重んじる今城さんの主張に行きすぎはあったでしょうけれど、入江氏の問題視する皇后さまの”宗教かぶれ”の原因が今城さんだったわけではない。しかし、入江氏はとりあえず、これを良い機会として、今城さんを切り捨てることを画策しはじめた……というのが皇室ジャーナリストの河原氏の主張であり、僕もそれに納得はしています。入江氏は、今城誼子さんに嫉妬していたともいいますね。

――男の嫉妬ですか!! 次回に続きます。

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

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最終更新:2021/03/20 17:00
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