コラム
高橋ユキ【悪女の履歴書】
「オレの正体をいま話して聞かせる」94歳オンナ詐欺師、最後の大ボラ! 商店街を主婦を巻き込む大脱走劇【岡山・高齢女性詐欺師:後編】
2021/01/30 17:00
あの手この手で、借りた金の返済を免れてきたトミヨだったが、ごまかしの万策も尽き果て、被害者たちに取り囲まれた。逮捕直前の夏のことだ。
「株も土地もないのとちがうか?どうだ、全部嘘だろう」
銀座のタバコ屋に“滝本キヨ”について確認し、トミヨの話が嘘だと知った者たちは問い詰めた。するとトミヨは、全て嘘だと認めたその直後、皆を一喝する。
「オレの正体をいま話して聞かせる。オレは密輸グループの一員で、サツに追われている身なんだ。だけどさ、お前たちに借りた金ぐらい、耳を揃えて返してやるから安心しな」
検挙された時の罰金や追徴金のために、密輸グループらで金を積み立て、隠し持っている……という“最後の大ボラ”をかましたのだ。
「このうちの1000万円を引き出してくるから、2日だけ待て」
そう言って、トミヨは岡山から立ち去った。
嘘に嘘を重ねて金を借りまくり、逃げた先の静岡でも、同じように嘘をつき続けたトミヨは、詐欺罪で起訴後、懲役2年、執行猶予5年の判決を受け、のちに岡山県の老人ホームに引き取られた。
しかし「オレ、こんな老人ホーム、いやだ、いやだ」と、一度脱走。岡山駅裏の旅館で、長野から出稼ぎに来ていた70歳の男性に、
「絵を預けてある名古屋の知人のところまで、一緒に行ってくださいな」
とまた得意の作り話で、名古屋行きの切符を用立ててもらおうとしていたところ、すぐに発見され、老人ホームに戻されたという。
【参考文献】
S48.10.17 「女性セブン」
S48.10.15 「週刊文春」
S49.8.8 「女性自身」
最終更新:2021/01/30 17:00