結婚とセックスと女の幸せをこじらせた、アラフォー女性の人生を描く『嵐の夜に』
恋愛とセックスは常に表裏一体である。恋愛を成就させるにはセックスの相性は切り離せないほど、男女間に重要な役割を持っている。恋愛の延長上に「結婚」を考えている女であれば、セックスはより重要性を持つ。だからこそ、セックスをこじらせてしまう女は多い。
今回ご紹介する『嵐の夜に』(斉木香津・著、性愛小説アンソロジー『果てる』<実業之日本社>より)の主人公・沙都子もそのひとりだ。物語は元カレのナオキとの再会の場面から始まる。ひとまわり近く年齢が離れた恋人にストーカー行為をされ、自宅に帰れなくなってしまった沙都子は、数日間ナオキの部屋に住まわせてもらうことになった。2年前にナオキと別れた沙都子は、もう38歳になる。対するナオキは26歳、裸を見せることも躊躇してしまう。
沙都子の子どもの頃の夢は「お嫁さん」であった。30歳までに結婚したいと思っていた沙都子だが、結婚と恋愛は常にセックスが隣り合わせだということに気づく。沙都子は30歳を過ぎてもセックスを楽しむことができず、詮議ばかりをしていた。
30歳を過ぎ、恋人もいないまま、バイト先のファミレスでナオキと知り合った。当時、大学とアルバイトを両立していたナオキは、バイトの帰りに沙都子を誘った。ナオキのバイクの後ろに乗り、導かれるままに彼の自宅を訪れ、体を重ねる。2年近く恋人もおらず、女としての自信を失いかけていた時に22歳の男に求められたというだけで、沙都子はこれまで味わったことのない絶頂を体験する。
彼との関係は2年続いたが、ナオキにとって、沙都子は「性の捌け口」以上のものにはならなかった。36歳になった沙都子は、いよいよ婚期を逃すと感じ、ナオキに別れを告げる――。
物語の後半では、沙都子の人生の縺れを描いている。ただ幸せになりたい、気持ちよくなりたいという想いだけで行動した沙都子の運命は、思いがけない結末を迎えている。女の「幸せになりたい」という気持ちほど厄介な感情はない。女の幸せには大抵「結婚」が前提となり、それを叶えるためにはセックスが付き物となる。
本作は女流作家7人のアンソロジーで、性をこじらせた女たちが多く登場する。「うまくいかない」と思い悩む女性たちに、ぜひご一読いただきたい。
(いしいのりえ)