コラム
知られざる女子刑務所ライフ108

「ムショの美容室」をご存じですか? 元女囚が明かす、刑務所のお正月とヘアケア事情

2021/01/10 16:00
中野瑠美改め瑠壬(作家)

 今年のお正月は、コロナでいつもと違う感じですが、ムショや拘置所にいるときは、お正月が待ち遠しかったですね。 

 予算は年々厳しくなって、メニューもしょぼくなってるそうです。それがイヤなら入れられるようなことをするな……ちゅうことなんですけど、瑠美がこうやって書かせてもろてるのも、ムショに行ってたおかげなので、まあ「なんでも勉強」ちゅうことです。その時はつらいけど、どんな経験もムダにはならないんやなあと思います。

 それにしても、ムショに関しては、いろんな人がいろんなところでいろんなことを書かれてますが、知られてない話も多いですね。

 刑務所に一般の人が使える美容室があるの、ご存じでした? 全部の施設にはないですけど、和歌山刑務所(和歌山市)や笠松刑務所(岐阜県笠松町)、川越少年刑務所(川越市)などは、美容室や理容室があります。

 これがなんと漫画になっていて、去年の誕生日にいただいて読みました。タイトルは、ずばり『塀の中の美容室』(小日向まるこ・桜井美奈、小学館)。更生やムショをめぐる「ええ話」です。

 そもそもムショは「迷惑施設」なので、「地元には何かお返しせなアカン」的なところがあるんですね。懲役が作った刑務作業品を安く売る「矯正展」(去年はネット販売のみでした)とか、施設によっては運動会にご近所さんをご招待するとか。

 懲役(受刑者)がハサミを持つなんて怖い……と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そのへんは大丈夫のようです。テクニックはまあまあだそうですが、何よりお安いので、気になる方は施設に問い合わせてみてください。

 漫画そのものは重すぎなくて、でもポイントは押さえてあって、読みやすいです。ただ、「主人公が収監からほとんど髪を切ってない設定」は、ちょっと微妙でしたね。ムショや拘置所は、夏場でも1日置きにしかお風呂に入れないし、冬は冬でドライヤーもないから、髪が長いと大変です。ゆうてもみんな伸ばしたいので、冬は乾かなくて髪が凍ることもあります。マジですよ。

 まあ、そんな細かいところはともかく、一生懸命働いて、人から感謝されることで更生につながることはありますからね。更生といえば、奈良県の荒井正吾知事は、参議院議員時代に法務委員を務めた経験もあるそうで、出所者支援に力を入れているとニュースに出てましたね。

 奈良県は、「司法と福祉をつなぐ」「すべての困っている人を助ける」「県は就労、生活支援、社会復帰に全力を尽くす」を掲げて、出所者支援に力を入れているそうです。

 やっぱり知事さんみたいな力のある人が言うてくれれば、いい方向へいきますよね。あとは本人の自覚です。

中野瑠美改め瑠壬(作家)

1972年大阪・堺市生まれ。覚せい剤取締法違反で4回逮捕され、合計12年の懲役を経験。出所後は、刑事収容施設への差し入れ代行業や収容者と家族の相談窓口などを行う。現在は堺市内で「Night Space祭」を経営。著書『女子刑務所ライフ』(イースト・プレス)がある。

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Instagram:@rumichibi1209

瑠壬公式YouTube

最終更新:2021/01/10 16:00
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