父親が老人ホームの女性スタッフにセクハラ!? 「同意しないなら退去」担当者が提示した条件
“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)
そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。コロナ禍で不安な1年だった。そんな今年を締めくくるお話なので、少し救われる話題を……と考えていたところに、以前お話を聞いた女性から連絡がきた。
「『突然大声を上げて怒り出す』要介護4の父と生活保護の兄……30代女性が背負った“家族”と“介護”の現実」で紹介した中村万里江さん(仮名・35歳)だ。
父親が女性スタッフにセクハラ
中村さんは、今何度目かの岐路に立っている。
前回お話を聞いて以来、中村さんは奔走していた。闘病中だったがん末期の母親を、看取りのできる有料老人ホームに入れ、別の有料老人ホームに入っていた高次脳機能障害の父親(68)を母親と同じ有料老人ホームに転居させた。母親の残り時間を父親とともに過ごせたかったのだ。
その母親もこの秋に亡くなり、父親は一人になった。父親が妻の死をどこまで理解しているかは、中村さんにもわからない。それでも、状態が大きく悪くなることもなく、中村さんは肩の荷を下ろしたのだった。
ところが、母親の死から1カ月ほどたったある日、父親が入っているホームから中村さんに連絡が入った。
「父が食事を拒否しているというんです。そのうえ、女性スタッフを触ってセクハラまがいのことをしたり、夜に自室ではなくロビーのソファーや廊下で寝たりして、ほかの入居者からクレームが来ていると。それで、父にボーっとさせるクスリを飲ませてもいいかということでした。当然、そんなクスリだから、ふらついて転倒するリスクもあるそうなんです……」
中村さんは即答できなかった。家族とすれば躊躇するのももっともだ。