コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

皇族のプリンセスが「婚約破談」!? 結納したのに結婚式は延期続き……“ワケ有り”宮家のその後

2020/12/26 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

――う、うーん、なかなか悩ましい数字ですね(笑)。

堀江 えぇ。でも一生の問題ですからね。

 伊都子さまの自伝『三代の天皇と私』(講談社)によれば、朝鮮王朝としては、国王である李太王が結婚には大喜び。日本の皇族の姫を配偶者にできれば、政情が安定すると大歓迎だったといいますが、方子さまの自伝『歳月よ王朝よ 最後の朝鮮王妃自伝』(三省堂)によれば、李太王はじめ誰ひとり歓迎していなかったとあります。

 どちらが本当だったにせよ、梨本宮家としては、朝鮮王朝側のあまりの政情不安定さが心配材料でしかなく、断りたくても「お国のため」と言われると、決して断れないのが皇族という立場でした。伊都子さまは最後まで抵抗したようですが、夫である梨本宮さまは最初から諦めムードで、「お受けするしか仕方ない」と繰り返すばかり。方子さまは、言葉では「わかりました」といいつつも、どこか破談になることを期待しているようなムードだったようですね。

――V6の岡田准一が李殿下を演じていた昔のドラマ『虹を架ける王妃』(フジテレビ系)を見たのですが、実際の殿下は丸メガネが似合うかわいらしいお坊ちゃんタイプに見えますね。

堀江 岡田准一が殿下というのは、まぁ、それはドラマの世界ですからね(笑)。ご自分の婚約決定を新聞で知り、ショックを受けた方子さまの手が震えているところを伊都子さまは目撃してしまいます。

 ただ、王世子殿下にお会いになるにつれ、日本で孤独な日々を過ごす殿下の支えになろうという気持ちに駆られ、結婚に前向きになっていったとのこと。母性本能が強めの方だったのかもしれません。

 お二人のご結婚前後、凶事は山ほど起きました。最初に起きたのが、李垠殿下の父王が暗殺されてしまわれたこと。それによってご結婚が延期され、ようやく1920(大正9)年4月28日、東京にて行われたお二人の結婚式の時には、朝鮮人活動家の手榴弾が馬車に投げつけられたり。またある者たちは李王家の屋敷に武器を持って押し入ろうとしたり。

――ええっ。ご無事だったのですか?

堀江 かろうじて、というしかありません。手榴弾は幸いにも不発弾だったそうです。

 ただ、ご成婚後の李垠殿下と方子さまのご夫婦仲はとてもよく、お子様もすぐにお生まれになりました。それが伊都子さまには初孫となった普(ちん)王子なのですが、この幼子を悲劇が襲います。王世子ご夫妻が朝鮮に里帰りになっていた短い間、東京に戻る前日に、なんと普王子が毒殺されてしまったのです。

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