コラム
オンナ万引きGメン日誌

万引きGメンはなぜ「おばちゃんのやる仕事」なのか? 危険と隣り合わせの現場で、私が感じていること

2020/11/28 16:00
澄江(保安員)
写真ACより

 こんにちは、保安員の澄江です。

 ここのところ、同僚保安員の間で「声かけ時における受傷事故」が連発しており、現場の警戒レベルが引き上げられました。不思議なことに、こうした事象は連鎖するもので、普段は滅多に発生しない受傷事故が、半月の内に3件も連続発生しています。被害者となった仲間たちは、60代の男性保安員1名と70代の女性保安員2名で、その内2名は擦り傷程度のケガで済みましたが、女性1名が肋骨及び胸椎骨折の重傷を負いました。詳しい状況を担当部長に尋ねれば、相手は酒や総菜などを盗んだ30代くらいの男性で、声をかけると同時に壁に押し付けられて、揉み合ったまま転倒。アスファルトに叩きつけられる形となったそうで、その時に骨折されたようだと話していました。事件発生時、多くの人が近くにおられたそうですが、皆さん呆気に取られるばかりで誰の助けも得られず、逃走した犯人は捕まっていません。負傷した保安員は、今回のことで引退を決意し、退職することとなりました。真面目に生きてきた女性の晩節を汚すような行為は、とても許せるものではなく、一刻も早く逮捕されてほしい気持ちで一杯です。

 万引きGメン(保安員)といえば、おばちゃんのやる仕事。過去に放送された報道番組の特集や、木の実ナナさんが出演されていたドラマ『万引きGメン・二階堂雪』(TBS系)のイメージも強く、そんな印象を持たれている方も多いことと思います。確かに、いままで共に過ごした面々を思い浮かべてみても、そのほとんどが40歳以上の女性でした。業務内容の危険度に鑑みれば、屈強な男性がやるべき仕事のような気もしますが、私が所属する会社の主たる現場はスーパーマーケットです。店舗の大きさにもよりますが、若い男性が平日の午前中から店内を巡回すれば、女性より目立つのは当然のこと。この仕事を始めた昭和後期の頃は、せっかく面接に来られた男性を、現場に馴染まないだろうという理由で採用していない時期もあったと記憶しています。盗難被害の多い女性用の下着や化粧品売場で、男性保安員が気付かれぬように身を潜めることは至難で、そうしたことから女性にしかできない仕事だと判断されていたのです。その一方、ドラッグストアやホームセンター、ショッピングモール、書店など、大型店や専門店を中心に保安員を派遣している業者も存在しており、そこには多くの男性保安員が在籍していると聞きました。このような現場は、換金目的や集団万引きが多く、捕捉経験が豊富で揉み合いに強い男性が求められるものなのです。

 いつも万引きしに来る不良高校生グループや、外国人窃盗団を捕まえてほしい。こうした依頼も、私たちにとって珍しいことではありません。そのような現場で遭遇する被疑者は、粗暴な雰囲気を持つ人が多いため、万一、犯行を現認してしまった際は、逃げ出したくなる気持ちになります。見たいけど、見たくない。捕まえたいけど、逃げ出したい。そんな気持ちにさせられるのです。それでも、見てしまったからには、声をかけるほかありません。危険を感じた場合は、お店の人に同行していただくことにしておりますが、タイミングが合わなければ1人で声をかけることになります。タイミングが悪いと、なにひとつ上手くいかないのも、この仕事にありがちなこと。このような負の連鎖が、受傷事故の発生につながっていくのです。

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