山下智久、英語力と俳優としての実力は? 英語発音指導士(R)と映画評論家に「ハリウッドで成功できるか」を問う!
では一方で、山下の俳優としての実力についてはどうだろう。映画評論家・モルモット吉田氏は、まず山下を「言わずもがなスター性がある。画面に出てくると引き立つ力を持っているタイプ」と評価する。
「初期の主演映画『映画 クロサギ』(08年)や『あしたのジョー』(11年)はクールな役柄でしたが、やはり“マスク(顔)”ありきの俳優というイメージが強かった印象です。しかし、10年代後半、『劇場版 コード・ブルー』前後あたりから、加齢によるところもあると思いますが、非常に演技に幅が出てきたと感じるようになりました」
ただ、ジャニーズ事務所所属ということもあってか、これまでは大衆的なエンタメ作品の主演が続いており、また役柄も限られてきた。そんな中、中国映画『サイバー・ミッション』(19)で山下は、これまでのイメージを覆す、脇役である悪役・モリタケシ役を演じている。
「例えば山下さんは、ドラマ『金田一耕助VS明智小五郎』(フジテレビ系、13年)で、主人公・金田一耕助役を務めていましたが、周りに合わそうとはせず、マイペースに演技をしている印象でした。ただ、彼はスター俳優ですから、周りが彼に合わせていけば問題ないと感じたんです。しかし『サイバー・ミッション』では、脇役なので周囲に合わせる必要があり、かつ悪役という、これまでのイメージにない一面を見ることもできた。彼のようなスター性のある人は、脇に回ったとき逆に引き立つと思いましたし、もっといろんなパターンの芝居を見てみたいですね」
海外作品で初めて、山下がどういった俳優かがわかったという吉田氏は、「山下さんがいま、ジャニーズを辞めて海外に行くという選択は非常に納得できます。海外作品のほうが、多彩な役を演じるられると思うので」と述べる。ただ、山下はこれまでテレビドラマが中心で、映画の出演本数は少なく、海外での知名度はほぼないという懸念もある。
「確かに、渡辺謙や真田広之のように、日本でキャリアを積み、ある程度年齢重ねてから海外に行くのとは違います。海外では、主演映画での興行的な成功は評価されるにしても、日本のテレビドラマでのキャリアはさほど見られません。しかし、キャリア的にほぼまっさらだからこそ、脇役にハマるともいえる。特に最近のハリウッド作品では、さまざまな人種の俳優を意図的に起用するようになっていますしね。『サイバー・ミッション』で演じたような悪役、冷徹な役をぜひ見てみたいです」
また吉田氏は、山下の海外進出と同時に、日本国内での活躍も期待しているという。
「山下さんは今後、渡辺さんや真田さんのように、日本と海外を行き来するような形になるのではないかと思います。稲垣吾郎さん、草なぎ剛さん、香取慎吾さんはジャニーズを退所後、これまで出演しなかったような小規模ながら質の高い映画に挑戦していますが、山下さんもそういった作品から声がかかるのではないでしょうか。例えば、実年齢に沿った子持ちの役なんてのも見られるかもしれませんよ」
そんな順風満帆そうに見える山下の今後だが、不安な点はないのだろうか。吉田氏は、「ポテンシャルはあるとは思いつつ、これまであまり映画に出演しておらず、かつ軽めの役が多かったので、年齢を重ねた時に芝居に重みが出るのか」と指摘する。
「ただ、ジャニーズのタレントは、子どもの頃から演技の仕事をしているので、発声や動きなど演技的な面において、モデル上がりの俳優よりずっと質が高い。山下さんは35歳ですが、この年齢で、あそこまで演技の基礎ができている人はなかなかいませんよ」
日本で数々の“大ヒット”を経験した山下だが、40代に向かう中、さらに多彩で質の高い作品に出たいという思いを抱いたのかもしれない。今後、果たしていい作品に巡り会えるか、日本から見守っていきたい。