万引きGメン、オンナ詐欺師に初遭遇! ポテサラの「半額シール付きふた」を悪用、その “図々しい手口”とは?
店長の期待に応えるべく現場に入ると、午前中のピークを迎えたところで、妙に周囲を気にしながら惣菜を睨む初老の女性が目に止まりました。どことなくカマキリを彷彿させる目の大きな女です。明らかに他者の目を気にしている様子が気になり、そのまま注視していると、半額シールの貼られた「具だくさんポテトサラダ」(298円)のふたを外したカマキリ女は、続けて割引されていない同商品のふたも外して付け替えてしまいます。半額シールを持ち込むなどして、正規の値段で販売中の商品に貼りつける行為は散見されますが、ふたを付け替える手口を見たのは初めてのこと。正規品のふたをつけられた割引商品の消費期限を考えると、これを購入した人がおなかを壊すことになるかもしれず、放置するわけにはいきません。ふたを付け替えられて放置された商品を確保したうえで、カマキリ女を追尾すると、48円の缶コーヒーと、半額になったあんぱんを手にして青果売場に向かっていきます。そこで、備え付けのポリ袋を手にしたカマキリ女は、箱入りのみかんを開封して一つ抜き取り、いわば堂々とした様子でポリ袋に入れてしまいました。続けて、派手にディスプレイされた巨峰やシャインマスカットに手を伸ばすと、いくつかの粒をもぎ取ってポリ袋に入れてしまいます。
(ちょっと図々しすぎるわね。全部お買い上げいただかないと)
高級青果は、一粒でも取られてしまえば形が崩れて、商品になりません。レジに向かうカマキリ女の動向を見守りながら、彼女が手をつけたブドウ類の房を余すところなく押収した私は、レジ列に並ぶ彼女の後ろにつきました。割引シールのついたフタに付け替えたポテトサラダを、不正な値段で精算した瞬間に、カマキリ女に声をかけます。貼り替え詐欺の場合は、万引きの既遂時期と異なり、値段を貼り替えた商品の支払が為されたところで犯罪が成立するのです。
「店内保安です。お客様、そちらのポテトサラダ、割引していないんですよ。ぶどうのほうも、商品にならないので、ご精算いただかないと。それに、みかんもタダじゃないです」
「え? ああ、そうよね。すみません」
この目で見た女の行動を、もれなく指摘すると、言い返す言葉が見つからなかったのか、素直に犯行を認めてくれました。呆気に取られるレジ店員を尻目に、カマキリ女を連れて2階にある総合事務所に向かいます。その道中に、犯行理由を尋ねてみると、まるで悪気のない態度で返されました。
「今日は、どうしちゃったんですか?」
「一人暮らしだから、たくさん食べられないでしょう。少しだけで充分だから、買うのがもったいなくて」
「ポテトサラダのふたを付け替えた理由は、なにかあります?」
「どうせ買うなら新鮮なモノを安く買いたいじゃない」