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『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』覚醒剤で服役12回、結婚4回の男の実像とは「母の涙と罪と罰 2020 後編 ~元ヤクザと66歳の元受刑者~」

2020/11/02 19:32
石徹白未亜(ライター)

 高野は主に覚醒剤で12回の服役経験があり、66歳の人生のうち30年は刑務所暮らしで、4度の結婚歴がある。シャバに出ても半年ももたず、またムショへ、という生活だったそうだ。

 言葉だけ並べると、ろくでもない人物像が浮かんでくるが、番組内での高野は「周りに気を使う人」という印象だった。支援をする学にも気を使っていたし、久々の娘や義母との再会では、相手に気を使いに使っていたのが見て取れた。そうした気を使う様子と、近隣住民と警察が来るようなトラブルを起こし、自宅で腹を切るという姿がまったくつながらず、そこに薬物の恐ろしさを見たように思う。

 高野の実の両親は、高野が幼少期の頃に離婚。父親は高野を両親に預け働きに出て、その後再婚するも、高野を残してまた別の女性の元に行き……と、かなりふがいない。高野は幼少期、少年期を寂しく過ごしただろうし、私がその立場なら父親を恨みそうだと思ったが、しかし高野と最後まで連絡を取っていたのはこの父親だ。

 高野にしてみれば義母と娘は、自分の覚醒剤の利用で一方的に迷惑をかけてしまい「会わせる顔がない」という思いから連絡が途絶えてしまったのかもしれないが、一方で父親はそのふがいなさゆえに、気兼ねせず連絡を取り続けることができたのかもしれない。番組の最後で、高野はようやく無縁仏に埋葬されていた父親の墓を見つけだし、スーツ姿で墓を訪れ、骨を分けてもらっていた。骨になった父親が高野の支えとなればと思う。

依存症支援もコロナの影響を受けている

 番組内では、新型コロナウイルスの影響で、高野が当初受けるはずだった依存症患者のための支援プログラムが中止になったと伝えられていた。

 コロナ禍の状況下、オンラインミーティングが増えたことで「実際に対面でのほうが伝わるものが多い」「オンラインでは物足りない」という不満の声をよく聞く。しかし、私自身は、オンライン会議は実際の場所に行かなくて済むし、無駄話も減り、つまらないときは別のことをしても知られることはないし、アフターコロナの世界においてもオンライン会議は是非残ってほしいと願っている。

 しかし、このような依存で苦しむ人たちが集うプログラムにおいては、対面の良さも大いにあるだろう。心の内を伝えるというのは、仕事のように、業務遂行において必要な要件をわかりやすく、簡潔に伝えるといったものではないからだ。だが、さらに別の見方をすれば、こういうプログラムに参加したいが、対面では敷居が高すぎると思う人や、遠隔地に住む人、そしてデジタルになじみや愛着のある人にとっては、「オンラインなら参加できるかもしれない」と、新たな支援につながる可能性もあるだろう。

 以前、元ひきこもりだった人が自分の経験を話すイベントを聞きに行ったが、その際、講演者が、会場の扉のドアは開演後も開けておいてほしいと話していた。引きこもりの人にとっては会場に来るまでがとても高いハードルとのことで、定刻通りに来られないことも多いという。その際、扉が閉じていると扉を開けることに気後れし、諦めて帰ってしまうこともあるそうなのだ。

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