[再掲]インタビュー

無印良品の生理用品が「シンプルでいい」で大好評! なぜ長年“キラキラ”なパッケージデザインが採用されてきたのか?

2020/10/30 17:01
サイゾーウーマン編集部
無印良品公式サイトより

 10月中旬、「無印良品」が一部の店舗で生理用ナプキンの販売を開始したところ、「シンプルなパッケージデザインが素晴らしい!」「キラキラしていないところがいい」とSNS上で話題になっている。同アイテムは、“無印らしい”無地の箱型パッケージが採用されており、一見すると生理用品とはわからないデザインとなっている。

 生理用品のパッケージデザインといえば、パステルカラーを基調としたパッケージに、花柄や蝶柄、レース柄などがあしらわれているデザインが主流だが、無印の生理用品が話題になっているのは、つまりそのデザインに納得いっていない層が少なからずいたということだろう。

 しかし、なぜ女性は、生理用品のパッケージデザインにシンプルさを求めるか。10月28日放送の『グッとラック!』(TBS系)で、無印の生理用品が取り上げられると、出演者たちの間で「生理用品を購入するときに『恥ずかしい』と感じている女性が少なくない」という点が指摘されることに。さらに、「生理は恥ずかしくない」という認識が広まることの重要性が説かれていた。

 サイゾーウーマンでも過去、生理用品のパッケージデザインについて、「以前から納得いかないと感じていた」というデザインジャーナリストでもある東京造形大学准教授・渡部千春氏に取材を行っていた。渡部氏は、なぜデザインの主流が「パステルカラーに花柄や蝶柄、レース柄」になったのか、さらにはデザインと生理に対する抵抗感の関係性についても考察いただいた。生理用品が世間の関心を集める今、あらためて掲載する。
(編集部)


渡部千春氏


(初出:2019年7月25日)

生理用品のパッケージデザインは「納得いかない」――美大准教授が語る“違和感”の正体

 6月12日、生理用品ブランド「ソフィ」を販売しているユニ・チャームが、「生理用品を購入する時に紙袋や中身の見えないビニール袋などで生理用品を包む外袋に対して、“紙袋いりません”と言う選択肢をもつことを推進するプロジェクト」として、「#NoBagForMe」プロジェクトをスタート。「女性の体に自然に起こる生理について、『当たり前に語れる世の中であってほしい』との願いを込めて」「生理用品を隠す必要性を感じさせない」新しいパッケージのデザインを、20〜30代の美大出身女性や元アイドルらとともに開発するという。

 ネット上では、この一報を受け「確かに生理用品のパッケージデザインはダサい」という声が散見されることとなり、また同プロジェクトにも携わるアパレル経営者で起業家のハヤカワ五味氏が、青山ブックセンターで生理用品のセレクトショップ「illuminate」を立ち上げるといった動きも出てきたが、デザインジャーナリストで東京造形大学准教授の渡部千春氏も、自身のブログ「これ、誰がデザインしたの?」において、以前から「生理用ナプキンのパッケージデザインについて、どうも納得がいかないところが多い」と、疑問を投げかけ考察を行っていた一人。今回、そんな渡部氏に、生理用品のパッケージデザインの問題点について話を聞いた。

花柄やピンクは「痛みを和らげる」ため?

――生理用品のパッケージデザインについて、「納得がいかない」と感じる点を具体的に教えてください。

渡部千春氏(以下、渡部) 「20〜30代」をターゲットにしているように思えてならない点です。ユーザーは12歳くらいから50歳くらいまでの幅広い層のはずなのに、「花柄」「蝶柄」「レース柄」「パステルカラー」など、中高生や中年女性が持つには違和感があるものが多い。もっとユーザー個々の指向性に合わせるのであれば、例えば中高校生くらいだとキャラクターものが好きな子もいるでしょうし、一方で中年層は、娘がいるかいないか、で分かれるかもしれません。母親は自己主張よりも娘を中心に生活用品を合わせようとする傾向が見受けられます。とはいえ、そうでないケースも非常に多い。子どものいない中高年、家族と一緒に住んでいない、あるいはシングルの女性などにもう少し意識を寄せれば、パッケージの好みはばらけてくるはずなのですが、現状、日本のマーケティングというのは生理用品に限らず、消費力の高い「20〜30代」の「女性」を中心に捉えがちですね。


 今ある生理用品のような「押しの強い色や柄」のパッケージで消費者を掴む傾向になったのは90年代後半くらいから。ここ20年ほどは変わっていないようです。それより以前は「生理は隠すもの」という認識が今よりも強く、何の表情もないようなパッケージでした。

――「花柄」や「パステルカラー」などのパッケージについて、ユニ・チャームは、「そうしたパッケージには『痛みを和らげる』ような優しいイメージもあり、実際に高い評価を受けてきた側面もある」(6月12日付け「ハフポスト日本版」)とコメントしています。

渡部 日本や海外の医薬品のパッケージデザイン集を見ると、日本に比べて海外は「パッケージで痛みを和らげよう」という意識はあまり感じられません。日本はそういう傾向が強いのかもしれませんね。

 なお、韓国の「ソフィ ボディーフィット 貴愛娘(ギエラン)」は、痛みを和らげるとされるよもぎ成分を配合している製品ですが、花柄やピンクではなく“漢方”のイメージを打ち出したパッケージになっています。

――そもそも痛みを和らげるイメージがパッケージに必要なのかどうかも疑問です。

渡部 実際に色彩学的には、パステルカラーなどの柔らかい色、緑系の色などは、人の心を穏やかにさせるといった働きはあると言われています。とはいえ、メーカーは消費者のアンケート結果に大きく左右されているのではないでしょうか。また、質問の仕方もやや誘導式なのではないかとも考えられます。例えば、花柄やパステルカラーのパッケージに関して、「このパッケージデザインは痛みを和らげると思うか」という質問を女性に投げかけ、「非常にそう思う」「そう思う」「あまりそう思わない」「まったく思わない」からどれかを選択させるというアンケートを実施した場合、恐らく「そう思う」にチェックする人が多いと思います。しかし「和らげないと思うか」という質問だと結果は違ってくるはず。アンケートでは後者のような聞き方は少ないと思います。

これ,誰がデザインしたの?(続)