なぜデヴィ夫人を起用するのか? 倫理観の低下、ザツな番組づくり……いまこそテレビ局に物申したいこと
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「ネットニュース見たんじゃないですか?」山崎夕貴アナウンサー
『突然ですが占ってもいいですか?』(フジテレビ系、10月28日)
長らくテレビを見ていて思うのは、最近のテレビ局もしくは番組は、倫理観が低下しているというか、作りがザツではないだろうか。
例えば、10月24日放送の『胸いっぱいサミット!』(関西テレビ)でデヴィ夫人が「みなさん、知らないでしょうけど、不妊になるのは堕胎が原因です」「前に付き合っていた男の人と、堕胎しましたって言えないじゃない。隠してますよ、全員が」「9割9分は堕胎です」と発言していた。
言うまでもないが、これは明らかに間違った情報で、ネットは炎上。デヴィ夫人はTwitterで補足説明をしたが、この時も「私の知る限り不妊の多くは堕胎経験者」と主張することをやめない。関係者から要求されたのか、デヴィ夫人はオフィシャルブログで謝罪したが、「私はカソリック教徒だったため、中絶によってその方自身、または周りの方々が生涯取り返しのつかない後悔に陥ってほしくないという強い思いからの発言でした」とつづっており、「中絶で不妊になること」に固執している様子が窺える。
デヴィ夫人の暴走は今に始まったことではなく、基本的に相手の意見は絶対に聞き入れず、激昂しやすい印象だ。怒りが頂点に達すると、個人攻撃に転じることもある。今だったら確実に問題になるだろうが、かつてある番組で男性と口論になったとき、男性が同性愛者であるという個人情報を暴露したこともあるだけに、明らかに議論には不向きな人だ。見た目は若くても、御年八十。ゆえに知識が古く、問題発言も多い。こんな危険な人物を、なぜテレビ局は起用するのだろうか。
また、司会者や女性アナウンサーの態度も、私には疑問だった。デヴィ夫人の「不妊になるのは、堕胎が原因です」発言に、MCのますだおかだ・増田英彦は黙ったまま、女性アナウンサーは「一部、そういった意見もあります」と安易に肯定してしまっている。
デヴィ夫人がここまで強く言い張るなら、二人とも「不妊の原因は9割9分堕胎」説について、いつの時代の話なのか、誰が言っているのか、何人のケースからそういう結論に至ったのかを掘り下げる必要があったのではないだろうか。デヴィ夫人は「私、絶対正しいです」と言い切っていたが、何の知識もない人があの番組を見たら「不妊の人は、中絶経験者」と信じてしまうこともあるだろう。デヴィ夫人のような人をゲストに招くのなら、司会者がきちんとストッパー機能を果たすべきではないだろうか。
また局側が、番組公式サイトに謝罪コメントを出して終わりにしようとしているのも、私には理解できない。今年4月に『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で、岡村隆史が「コロナが終息したら、ものすごく絶対に面白いことがある。苦しい状態がずっと続きますから、美人さんがお嬢(風俗嬢)やります」と話したことが“女性蔑視”とされて大炎上したが、デヴィ夫人の発言は、女性蔑視を通り越して、人権侵害の域に達していると私は思う。テレビ局は降板させるのが妥当ではないだろうか。
言論の自由はもちろんあるが、「言ってはいけないこと」「根拠を提示したうえで、言わないといけないこと」も確実にある。そのあたりの調節ができず、言いたいことを言うだけなら、テレビはYouTubeと変わらないだろう。