万引きGメン困惑、急増する「カゴパク」の実態! ホームセンターで高額商品をカゴごと盗んだ男に、店長がブチ切れたワケ
こんにちは、保安員の澄江です。
近頃の現場は、食品スーパーばかりなのですが、久しぶりにホームセンターの現場を踏んできました。個人的な好みを言えば、いわゆるガテン系のお客さんが目立つホームセンターは、あまり好きではありません。食品スーパーと比べて、粗暴で犯罪慣れした被疑者と遭遇する機会が多く、その危険度に鑑みれば、私のようなおばちゃん保安員が活躍できるような現場ではないのです。
ホームセンターにおける被害は、取扱商品の幅広さから大量、高額となってしまいやすく、当然に逮捕までに至る確率も高まります。車で来店される方が多く、集団で犯行に及ぶケースも珍しくないため、受傷事故の発生率が高いことも特徴といえるでしょう。過去には、車に乗り込んだ被疑者を捕捉するべく運転席のドアノブに手をかけた仲間が、そのまま引きずられて中指と人差し指の一部を欠損したこともありました。今回は、つい先日に関東圏の大型ホームセンターで捕らえた高額万引き犯について、お話ししたいと思います。
当日の現場は、ホームセンターH。ネジ本からペットまで、ありとあらゆる商品を取り扱う郊外型の巨大店舗です。1時間ちょっと電車に揺られて、最寄駅からバスに乗り継ぎ、のどかな道を20分ほど走って現場に到着。大きな駐車場と資材館を通過して事務所に入ると、アインシュタインの稲田直樹さんに似た店長が、不愛想に出迎えてくれました。
「高額品を中心に見てください。それと、レジ袋が有料になってからカゴの持ち去り(カゴパク)が増えているので、もし見つけたら教えてもらえますか」
「わかりました。カゴを持っていかれた場合、どう対応されますか?」
「捕まえるわけにはいかないから、やんわりと注意して返してもらう感じかなあ」
以前から見かける事象ではありますが、レジ袋有料化以降、店内カゴの私物化は全国的に急増しており、どの店も対応に苦慮しています。つい先日も、独立系の食品スーパーで、カゴを戻さず車内に持ち込んだ初老のお客さんと、オーナー兼店長さんが駐車場内でトラブルになっていました。
「お客さん、カゴごと持っていかれたら困るんですけど。ちゃんと戻してもらえますか?」
「次、来たときに返すよ。カゴぐらい、いいじゃないか」
「全然よくないですよ。それはウチの物ですから、持っていかれたら困ります」
「なんだと! 客を泥棒扱いしやがって、この野郎!」
店長に掴みかかる勢いで詰め寄った初老のお客さんでしたが、この騒ぎを周囲で見守っていた若いお客さんが間に入ると、店長に向けてカゴを放り投げて車に乗り込んでしまいました。新型コロナウイルス発生以降、小さな間違いや当たり前のことを他人に指摘されることで、無駄に大声を出したり、乱暴な態度を取ってしまう人が増えているように感じるのは気のせいでしょうか。いわゆる迷惑客は、店側が曖昧な態度を取ると、さまざまな形でつけこんでくるので、慎重に対応する必要があるのです。呆気に取られる店長を車内から睨みながら、ものすごい勢いで走り去った初老の老人の表情を見れば、まるで悪気のない感じでした。その時の状況を稲田さんにお伝えして、カゴパク発見時の対応を検討していただきます。
「そんなヤツもいるんだ。とんでもねえなあ。警察を呼ぶのも、ちょっと違う気がするしねえ」
「声のかけ方が、難しいですよね。きちんと警察が扱ってくれるかも微妙ですし……」
「わかりました。その時は、相手を見て判断します」