『ザ・ノンフィクション』支援者を“裏切る”犯罪加害者の心情とは「あの日 妹を殺されて 前編 ~罪を憎む男が選んだ道~」
再犯率48.8%。ほぼ2人に1人が再犯していることになるが、捕まっていない人も考えると、実質は「2人に1人以上」なのかもしれない。
普通はとらないであろう「犯罪」という手段に手を染めてしまう人というのは、そうでない人より「投げやりで短絡的」な部分があるように思う。そんな人が「キツい状況」に置かれれば、ますますその行動は短絡的で投げやりになってしまうだろう。草刈が言うように、「キツく言うて」しまったら、犯罪に再び手を染めかねない。
「犯罪を犯したのだから、キツイ状況にあって当たり前だ、それが償いだ」とする考えや、被害者や被害者家族の心情もあるだろう。一方で、キツイ状況にあれば、再犯率を減らすことは難しくなる。犯罪加害者の“その後”のあり方には、明確な一つの答えなど存在しない。非常に難しいバランスだ。その結果、再犯率が上がり続け48.8%にまでなった数値を、国はどう考えているのだろう。
手を差し伸べてくれる人を「試して」しまう22歳のタケオ
スグルやコウスケのように、草刈の恩に報いたいと懸命に頑張る人もいる一方で、行方をくらましたり、再犯に手を染めてしまう人もいる。
そういった「裏切ってしまう」側の心境というのは、どういったものなのだろうと思っていたが、カンサイ建装工業に入り、一度は更生を目指すも特殊詐欺グループに加担してしまった22歳のタケオが、胸中を話していた。
「自分の中で(他人を)信用できない、でもこの人ちょっとだけでも信用したい。その二つの感情がしんどかった。だから結局、人を裏切るのも、その人を試しているじゃないけど……」
タケオは母親から壮絶な虐待を受け育っていると話していた。なので人を信じられない。信じられないから、手を差し伸べてくれる人に対し、裏切りなどの形でそれでも自分を見捨てないかと試してしまう。タケオの発言からは、「試す」ことで人から失望されてしまうこともわかっているのだが、それでも試すことをやめられない、という、どうしようもないほどの業を感じた。
草刈や加害者支援をしている人たちは、それでも支援の手を差し伸べてくれるだろうが、大抵の人はうんざりして、関わりたくないと遠ざかってしまうだろう。それでは、犯罪加害者はますます孤立してキツイ状況に立ってしまう。
タケオに限らず、人を試すような言動をとる人はいる。追い詰められている人ほど信じることが怖く、不安から人を試してしまうのだろう。それが、ますますその人を孤立させ追い詰めていく。他者には、そうした姿は人とつながり、健やかに生きることを拒絶するように見え、破滅願望と似たものすら感じさせる。そんな中、彼らが「悪い仲間」と出会ったら、あっという間に染まっていってしまうかもしれない。
来週の『ザ・ノンフィクション』は今回の続編。15年前、福子さんが殺害された事件の詳細を知る人が草刈を訪ねる。