BTS、こんまりも包容する『アメリカン・セレブリティーズ』――海外セレブウォッチャーが語る、“熱狂”の理由
――いまアメリカでは、コロナ禍で経済格差が今まで以上に露骨に表れ、BLM運動により人種差別に対しても具体的な解決を求める動きになり、それらをエンパワメントするセレブも多い。一方で、類似した問題を抱えているはずの日本では、それらの動きを「他人事」「理想論」として見る向きもあります。日本で生まれ育った人と米セレブの距離感をどう見ていますか?
辰巳 基本的な話として、日本とアメリカのショービズは簡単には比較できないと思います。契約体制から異なるでしょうし、エンターテイナーの政治的発信に対するネガティブな反応は米国でも珍しくない。ただ、日本の芸能界でもソーシャルメディアが普及してきていますし、社会問題にまつわる発信も増えていっているように感じます。
距離感については、いろいろな「違い」を感じることは多くなりがちだと思います。言語自体がハードルになりやすいですしね。ただ、そうした現実のボーダーや距離を超えて心を突き動かされたり、共振を与えられたりすることがアートの美点だと思います。逆のパターンですが、日本のアニメ『ドラゴンボール』(原作:鳥山明)はアフリカン・アメリカンの男性にとても人気があるといわれています。よく語られるのは、ほかの惑星からやってきた主人公がときに憤怒しながら戦いを繰り広げていく構図が、不平等な環境で「強さ」を求められる黒人男性の境遇と似ている、という意見。たとえ作者自身がそう意識していなくても、受け手によってさまざまな感情や影響が生まれて、広まっていくわけです。
正直、本で取り上げたようなトップスターは、大きな注目に晒されながら大金を稼いでいる人ばかりなので、世界中の多くの人々にとって「雲の上の存在」ではあるでしょう。でも、彼らの作品や発信、ふとしたとき漏らされるなにかに心動かされるファンは多い。『アメリカン・セレブリティーズ』は文体もトピックもかためにしてありますが、どこかで対象のセレブリティの軌跡や信念に心を動かしてもらえたらいいな、という想いで書きました。
辰巳JUNK(たつみ・じゃんく)
平成生まれのポップカルチャー・ウォッチャー。主にアメリカ周辺のセレブリティ、音楽、映画、ドラマに関する論考をウェブメディア中心に寄稿している。
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