コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

YouTuber・フワちゃん、坂上忍を「あんた」呼び! 「タメ口強気キャラ」が芸能界で通用しないと思うワケ

2020/09/03 21:00
仁科友里(ライター)

 それでは、このタメ口強気作戦で芸能界を渡っていけるかというと、そう甘くないのではないだろうか。『ダウンタウンなう』で、フワちゃんは「怖かった芸能人」として、バイオリニスト・高嶋ちさ子の名前を挙げていた。「高嶋ちさ子は怖い」「目でめちゃくちゃ威嚇された。失礼はたらいたらマジで手出されるんじゃね? と思って。だから、しれ~と目線をそらした」と説明していたが、タメ口強気作戦は「男性にしか通用しないこと」に、フワちゃんは気づいているのだろうか。

 「大の男が女子ども相手に本気になって」というように、日本では女性と子どもを弱いもの、一段低い立場として見る傾向がある。男は「女子ども」より上の立場なのだから、仮に「女子ども」がおかしなことをしたとしても、本気で怒ると「男の値打ちが下がる」と言う人もいた。フワちゃんは20代の女性なので、番組のMCを務める男性芸能人から見れば「女子ども」枠だろう。自身のイメージ低下と「女子ども相手にむきになっても仕方がない」という考えから、フワちゃんを怒る男性芸能人は少ないのではないだろうか。

 それでは、女性芸能人がMCだとどうか。年若いフワちゃんに呼び捨てにされて、むっとすれば「おとなげない」と言われ、お説教をすれば「怖いオバサン」とか「若い子に嫉妬」と言われかねないだろうし、では、男性と同じく笑って対応しても、「裏ではキレてそう」などと言われかねない。こうなると、女性芸能人にとって、フワちゃんは関わると面倒な存在になるだろう。フワちゃんと絡むと自分が損をするので、高嶋のように、関わる前に牽制する女性タレントは多いのではないか。

 一方フワちゃん側も、目上の女性タレントを前にすると、タメ口強気キャラが崩壊する面があるように思う。というのも、『徹子の部屋』で、フワちゃんは司会の黒柳徹子を「徹子さん」と呼んでいたのだ。男性の大御所は呼び捨てなのに、女性の場合はそうしないとなると、視聴者に「案外、忖度してる」と思われて、「自由奔放」という最大の武器がブレてしまうだろう。

 芸能界を渡っていくには、複数の武器を持っていないといけないのかもしれない。フワちゃんがテレビや芸能界にこだわっているとは思わないが、もう一つ違う何かを生み出さなくてはいけない時期に来ているのではないだろうか。

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2020/09/03 21:00
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