『ザ・ノンフィクション』ヤンキーではない「中卒」の実情「最終学歴は中卒だけど… ~ボクの働く場所~」
安藤はビジネス書を読みっぱなしにせず、ノートに要約まで作る真面目さで、スティーブ・ジョブズの書籍を読んだ際は「粘り強さ」をポイントとしてメモを残していた。しかし安藤の状況を見ると、高校を中退して、今回もヤンキーインターンも離脱してと、まさにその「粘り強さ」が足りないのではと心配だ。
番組を見る限り、家族の世話などで勉強がおろそかになり、そのため入学した高校は自身の学力よりも下のレベルで、自分の居場所ではない、という思いがあったという。確かに、「どうもここは自分の居場所ではない」という居心地の悪さは、モチベーションが大きく下がる要因だと思う。とはいえ、「高校を辞める」というのは相当大きな決断であり、そこまでに至る理由だろうかとも思う。その後、アルバイト先のカラオケ店で高校生を接客したときには「俺も本来はこっち側だったんだな」と複雑な心境も話していた。
ヤンキーインターンを離脱した理由は「もっと違うことが知りたくなった、ここで得たものを次につなげていくために違う情報が欲しくなった」からだといい、高校を中退した理由より、さらによくわからなかった。言いたくなかった真の理由があるのかもしれないが、番組内で伝えていたことが本当の離脱の理由なら、ジョブズの言う通り、もう少し粘り強いほうがいいのでは、と思う。せっかちなのか、どうも見切りをつけるのが早すぎるように見えた。
ただ安藤はまだ、そもそも18歳なのだ。バイトを1日で辞めてしまう18歳だってたくさんいる。粘り強さを今後ゆっくり身につけていくかもしれないし、また、粘り強さは無理だと諦め、自分の他の特性で勝負していく道もあるだろう。
営業成績で驚異的な結果を残す18歳、伊藤
電話営業で脅威の成績を見せていた伊藤は、ユニークな魅力あふれる18歳だった。伊藤は電話営業の際、たたき上げのやり手営業部長のような、相手にぐいぐい畳みかけていく攻めのトークで結果を出していた。こうした営業スタイルを嫌がる人もいるが、廃れないのは効果があるからともいえる。自信にあふれた感じを頼もしく思う人だっているだろう。18歳でこれができるのは凄まじい。
一方で私生活は、小学3年から不登校になったという境遇もあるのか、同期の皆と食事に行きたいものの、ひとり定食屋で食事をとるなど、営業スタイルから想像がつかないほど控えめだ。番組の最後で、前田、浅見と焼肉屋に行った際は、しゃべる浅見の横で伊藤はニコニコ頷いていた。
ハンドルを握ると性格が変わる人がいるが、伊藤は電話を持つと変わるのだろうか。今の“憑依型”スタイルがもし、かなりの無理の上に成り立っているならとても危険だと思うが、このやり方が楽しいと思えるのなら、華々しい成果も伴い、とても幸福な状態だ。
4人は、これからたくさん社会で失敗をすると思うが、それは「中卒」が原因というよりむしろ「若い」からだろう。学歴と関係なく人は社会で失敗しまくって、大恥や冷や汗をかいて反省して成長していくのだと思う。失敗しながら、それぞれの「いい感じの人生」を模索し、つかんでいってほしいと思う。