中学受験に2年間で400万円投入、マンションも手放して……「受験産業に踊らされた」母が今思うこと
結局、昨年、芳樹君はある中堅の大学付属校に入学したのだが、ここで問題が発生したそうだ。
「主人がリストラされてしまい、一気に家計がピンチになったんです。大学付属校って、学費が高いので……。それで、いろんな奨学金制度を探したんですが、中学生にはないんですよね。お金がないなら、公立に行けばいいってことみたいです。でも、今さら転校させるのは、あまりに可哀想なので、マンションを手放すことにしました」
多香子さんに、今、中学受験についてどう思うかを聞いてみたところ、彼女はこう言った。
「やっぱり、何も知らない素人が雰囲気だけでやるもんじゃないって思います。中学受験って、お金が湯水のように消えることもありますけど、それって多くの場合、親の要らぬ期待とか欲があるように感じるんです。なんでしょうね、周りの優秀な子たちと同じじゃなければならないっていう呪縛に、親子ともども、振り回されていたように思えるんですよ。今、冷静に振り返ると、あんなにお金と時間をかけなくても、入れるところに入ればいいだけの話で……。特にお金のことは、もっと冷静になるべきでしたね。親として最も情けないのは、現在、小2の芳樹の妹には、本人がいくら望んでも、中学受験は受けさせてあげられないことです」
幸いにも芳樹君はその学校を気に入っており、今のところ塾要らず。万が一、家計が好転しなくても、高校になると学校独自の奨学金が給付される制度があるとのことで、安心材料ではあるという。さらに、大学付属校なので、長い目で見れば、中高生にかかりがちな塾代、予備校代、大学受験料が丸ごと浮く可能性もある。多香子さんの総決算はまだ先の話だ。
中学受験、その先の中高一貫校にはさまざまなメリットがあることは確かだが、「ない袖は振れない」世界であることもまた事実。親御さんは受験参入前にこそ冷静に、教育費シミュレーションをしておくことを強くお勧めしておきたい。