【『統合失調症にかかりました』さいこさんインタビュー】病気になって失ったもの、得たもの
――闘病から症状が落ち着き、復職(就職活動)をする際、いろいろな苦労があったと思いますが、社会生活に戻るにあたり気をつけたほうがいいことがあれば教えてください。
さいこ 実際に私が一番悩まされたのは、人とうまくしゃべることができなくなっていたことです。長い間の闘病生活で特定の人間としか会話しなかったせいで、コミュニケーション能力が底辺にまで下がっていました……。電話をする、電車に乗る、人の目を見る、会話のキャッチボールをする、どれひとつうまくできずパニックになりました。「普通に戻った!」と思って活動しているので、「あれ!? 全然普通に戻れてない!」と焦りました。
でもそんな急にできるわけなんかなくて、できないのが当たり前なんだっていう気の持ちようも大切なのかもしれません。中々、パニックの状態で実際にそんな自分を客観的に見ることはできないと思いますが……。
――“普通”に対する価値観を変える必要があるんですね。
さいこ 病気になる前はできていたことが、まったくできなくなったことから、「できてあたりまえ」のことはひとつもないんだなと思うようになりました。統合失調症を知らなかった時は、よくわからない行動をする人のことはまったく理解できなかったのですが、病気を経て、どんな変な行動もその人の中では意味があってやっていることなんだと知りました。
――現在はお仕事もバリバリされていますが、これからもし描きたい漫画があればお聞かせください。
さいこ 描きたい漫画はたくさんあります。うちの家族の面白話とか、会社の愉快な仲間たちとか。高校時代に少しだけ生活してた監獄のような寮生活の話とか(笑)。見ていて面白くて笑っちゃうようなのが描きたいです。
――面白そうなエピソードばかりですね……! マンガになる日が楽しみです。最後に、出版を迎えた今の気持ちを聞かせてください。
さいこ 病気の最中は、真っ暗闇でした。先がなくて光もなくて、ずっとこのままなのかという不安といつ殺されるかわからない恐怖と、なんで自分だけがこんな目に遭わなきゃいけないのかという怒りで、ぐちゃぐちゃの毎日でした。それでも、生きていてよかったと思います。完全に病気が治ることはなくて、今でも病院に通っています。調子のいい時、悪い時もちろんあります。落ち込む時もしんどいこともたくさんあります。
でも、楽しいことやうれしいこともたくさんあります。それらは逃げたりしないので、自分にできることをやりながらゆっくり前に進んでいきたいと思います。
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