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ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』東大相撲部員の青春「東大生の僕が手に入れたもの~「東京大学相撲部」悩める青春~

2020/08/11 12:37
石徹白未亜(ライター)

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。8月9日は「東大生の僕が手に入れたもの~「東京大学相撲部」悩める青春~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 東京大学駒場キャンパスの片隅にある相撲部。1975年創部の歴史ある部活ながらも、華々しい実績があるわけでもなく、東大の中でも存在感は薄く、新入部員の獲得にも苦労している。女子マネージャーの田中は入部した際、なぜわざわざそんな変なところに、と家族から言われたという。

 前主将の4年の野口はムードメーカーで、中高一貫の男子校の進学校を首席で卒業。高校時代の学年一番となったテストの結果をスマホに残しており、それを見るのが楽しみだという。一方成人式では地元の中学に進学した友人らと交流できない「ぼっち状態」で、俺は東大生なんだというプライドで乗り越えたと自虐気味に後輩に話し、テニスサークルに入っていれば彼女ができたとぼやく。

 現主将の須山はイケメンの貴重な「陽キャ」。1浪して慶應義塾大学に進学するも、諦めきれず東大に入り直した努力家でもあり、相撲にも熱心だ。そんな須山と入学時点は相撲の力量が同程度だったものの、水をあけられたと話す益田。まわし姿でアイドルの振り付けを踊ったり、いつも笑顔の青年だが、何事にもやる気が出ず、将来にやりたいこともない自分に苦悩している。新入生の小山はバーチャル平城京を作るほど古代史が好きで、研究者志望。古代史のことばかり話すため「イカ東(いかにも東大生の略:勉強ばかりしていて恋人も作らず的なネガティブなニュアンスで使われる)」と言われると苦笑する。

 益田は一単位足りず留年してしまい、それでも番組スタッフの前では笑顔で、なぜこんなときでも笑顔なのかというスタッフからの質問に自分の笑顔は「自己防衛」なのだと話す。そんな益田を励ますべく、相撲部員たちは益田の髪を染める。親から反対されたとすぐ黒に戻してしまうが、その後、益田に変化が見られる。それまで親が買ってきた服をただ着ていたが、相撲部員の友人とともに服飾店に行くなど変わり始めた。春、野口は卒業前の追い出し稽古で部員たちとぶつかり稽古をしたあと、桜の咲きはじめたキャンパスの片隅にまわし姿のまま転がり空を眺めていた。

苦悩と仲間のいる相撲部員のまばゆい青春

 青春には「男女交際」が必要だと、特に野口は焦っていたように見えたが、東大相撲部員たちの過ごす日々は眩しすぎる青春に見えた。きっと部員たちも、卒業し年齢を重ねるごとに、かけがえのない時間を過ごしていたことに気づいていくのだろう。東大に入ったからといってすべてうまくいくわけではないという現実に直面し苦悩し、だが、苦悩を話すことのできる相撲部の仲間がいる。番組を見ていて、「苦悩」と「仲間」こそが青春なのではないかと思った。

 やりたいことがない自分に益田は苦悩していたが、私が「苦悩」しだしたのは、大学4年になって就職がさっぱり決まらないという現実に直面してからだった。少なくともそれまでの大学時代は、「ようやく受験勉強から解放されてうれしい、大学は面白くないし、毎日朝から晩までゲームをしていよう」という「苦悩する以前」の状況だった。

 人は現実で壁にぶつからないと苦悩しない。益田が苦悩しているのは、それだけ現実と向き合っていると言え、その時点でほかの大学生より先んじているとも思える。そして益田は悩むだけでなく、今まで親に買ってもらっていた服を相撲部員とともに買いに行くなど、できることから行動に移している。苦悩しながら前に進もうとする益田を応援したい。

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