ツナマヨに、のりの佃煮とキムチ!? 「一体、どんな味?」と話が弾むサンドイッチ&トースト本『ぱんぱかパン図鑑』
時短、カンタン、ヘルシー、がっつり……世のレシピ本もいろいろ。今注目したい食の本を、フードライター白央篤司が毎月1冊選んで、料理を実践しつつご紹介!
今月の1冊:『ぱんぱかパン図鑑』“つむぎや”金子健一 著(扶桑社)
見ているだけでも楽しくなれる料理本と、出会えた。その名も『ぱんぱかパン図鑑』、タイトルの響きからして、いいですねえ。口に出して言ってみてほしい。ぱんぱか・ぱんずかん。なんだか、ホガラカーな気持ちになってきませんか。
トーストやサンドイッチの食べ方142種類が紹介されるレシピ本なのだけれど、「大人だけでなく、子どもたちにも楽しんで興味を持ってもらいたい、という想いを込め」て図鑑とした、と(著者まえがきより)。そう、小さい頃に図鑑を眺めてワクワクしたような、あんな気持ちがよみがえってくる本なのだ。
冒頭に紹介されるのは、18種類ものバタートーストのアレンジ。まずはバターがしみ込みやすいよう、厚切りの食パンに十字に切り込みを入れる工夫から始まる。その切り込みをだんだん増やしてみよう、側面に切り込みを入れてみよう、切り込みではなく太い棒で凸凹をつけたらどうなるか……と、バタートーストが自在に、どんどん変化していく。「食パンにバターをぬるだけのもの」という固定概念がコロコロと転がされ、新しいバタートーストの世界が広がっていくのが実に楽しい。
次はピザトースト、その次はチーズトースト。王道の作り方もちゃんと紹介されて、これがかなり勉強になる。ピザトーストもチーズトーストも、生まれてからこのかた適当に作ってきた。専門家のレシピをきちんとなぞったことなど、なかった。指示される分量と焼き時間を守って作ってみたら、おお……変わるものだなあ、やっぱり。第1章の序文、著者の言葉で「(トーストは)単純だからこそ奥深く」とあるが、まさにまさに。
著者の金子健一さんはもともとパン職人で、マツーラユタカ氏とのフードユニット『つむぎや』として、ケータリングや料理雑誌へのレシピ提供で人気を博し、現在は長野県松本市で料理店を営みつつ、料理家としても活動されている。一度松本のお店を訪ねて、お昼をいただいた。食材の良さを生かした、朴実でやさしい味わいの料理が忘れられない。
「『これ、おいしそう!』とか『どんな味がするんだろう?』『今度これつくって!』と、この一冊が親子の会話のきっかけになりますように」
とは、まえがきにある金子さんの言葉。
たしかに、「一体、どんな味?」と好奇心が刺激されるメニューがいっぱい。個人的に特に気になったのが、ツナのりキムチサンド。のりはなんと、のりの佃煮。刻んだキムチとツナ、マヨネーズ、のりの佃煮にキュウリの粗みじん切りを一緒にして、パンにはさむ。味の想像がまるでつかない……! やってみれば、クセになる、奥深いおいしさだった。親子にかぎらず、食いしん坊同士で手に取れば、きっと話が弾む本だと思う。
「パンに何かをのせる、はさむって、こんなにも自由なんだ」と思わせてくれる、金子さんのパン図鑑。「この組み合わせがパンと合うなら、きょうのおかずの残りもはさんでOKかも?」なんてひらめきを、きっと与えてくれるはず。
白央篤司(はくおう・あつし)
フードライター。郷土料理やローカルフードを取材しつつ、 料理に苦手意識を持っている人やがんばりすぎる人に向けて、 より気軽に身近に楽しめるレシピや料理法を紹介。著書に『 自炊力』『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』など。