タイBLドラマ『2gether』人気のワケ――動画配信とSNS、ファンの翻訳が盛り上げるブーム
筆者がタイに滞在していた2013年ごろ、現地ではすでにジャニーズの人気は陰り、K-POPの勢いが強かった。バンコクで行われた日本のドラマやエンターテインメントを売り込むイベントを取材し、サイゾーウーマンでも記事にしたが、当時ジャニーズだった元KAT-TUNの田口淳之介、菅野美穂、東京女子流、ニコ動出身アーティストなどが来タイし、大勢のファンが集まり、熱気を帯びていた。
記事にも書いたが、日本のドラマを売り込もうという企画にもかかわらず、会場に集まったタイのファンは、すでに海賊版DVDでそれらのドラマを見てしまっていたのだ。そのDVDには有志によるタイ語字幕が付けられていた。
タイのファンたちは、日本の漫画やアニメをきっかけに日本に興味を持ち、日本語を勉強し、日常会話ができたりJ-POPを歌えたりする人も多かった。
それと全く逆の現象が今、日本で起きている。合法的に見られる動画配信サービスで、有志による日本語字幕を付けられたタイBLドラマを見てハマり、それをきっかけに、タイの文化に興味を持ったり、タイ語を勉強し始める日本人が増えているのだ。
多様なプラットフォームで公開作品も続々
先述のドラマ『2gether』(全13話)は、大学生のタイン(ウィン)が同級生のサラワット(ブライト)に「偽装彼氏」を依頼したことをきっかけに、恋愛関係に発展していく姿を描いたラブストーリー。7月31日から、動画配信サービスRakuten TVで配信がスタートし、WOWOWでも10月22日から放送が決定。また、それに先駆けて、「ザ・テレビジョン」(2020年7月10号/KADOKAWA)のアジア配信ドラマ特集で紹介された。
そのほかの作品も公開のプラットフォームを拡大している。16年にタイのオンライン小説を原作にドラマ化され、アジアで爆発的な人気を誇った『SOTUS』はGYAO!などで配信中。タイBLドラマとして日本で初めてDVD-BOXが発売された『Love By Chance』も、Amazonプライムビデオなどで見ることができる。昨年、主要キャストによるファンミーティングが日本で開催された『Until We Meet Again~運命の赤い糸~』は7月3日にDVD-BOXが発売されたほか、Rakuten TVでも配信中、8月22日からはアジアドラマチックTVで放送が始まる。今やテレビに限らず、配信やDVDなどさまざまな方法で作品に触れることができるのだ。
出演している俳優の見目麗しさ、少女漫画のように心ときめくストーリー、メイン以外のキャラクターも含めたクオリティの高さなどが魅力といわれるタイのBLドラマ。今後、ますます公開作品は増え、ファンも拡大していくだろう。この勢いで映画や音楽も含め、さらに広くタイのカルチャーに触れる機会が日本で増えていくことを期待したい。
(西野風代)