コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

清原和博氏、テレビ出演で応援の声続々も……薬物タレント復帰の“あいまいすぎる基準“に疑問

2020/07/09 21:40
仁科友里(ライター)

 清原氏が番組で語ったエピソードは、芸能界復帰のためのプレゼンテーションとしては、合格だろう。けれど、もし「薬物依存から立ち直りつつある姿を見せるためのもの」だとしたら、少し足りなかったのではないだろうか。

 「野球さえしていなかったら、こんなこと(薬物使用と逮捕)にならなかったのか」と、清原氏は薬物使用の責任を野球に転嫁するような発言をしている。しかし、プロ野球選手で覚醒剤に手を染める選手がごくごく一部である現実から考えると、野球のせいではなく、本人の問題である。また、栄華を極めたスーパースターの付き合う“仲間”が、覚醒剤という違法薬物を使うことに抵抗感がなく、気軽に勧めてくることも気になる。もし清原氏を大事な仲間とみなしているのなら、そんなことはしないのではないだろうか。

 また、清原氏は逮捕前、銀座の高級クラブのママと不倫旅行をしていたのを「週刊現代」(講談社)に撮られ、母、元妻、息子を傷つけた前科がある。家族家族と言っている割には、家族を大事にしているように私には感じられない。清原氏の薬物問題の根っこにあるのは、なぜ付き合ってはいけない人と付き合い、大事にすべき人を大事にできないのかということではないだろうか。

 念のため申し添えるが、私は薬物で逮捕された清原氏の芸能界を含めた社会復帰に反対しているわけではない。仕事をして金を稼がなければ生活できないし、世の中の役に立っているという実感が持てなければ、また薬物に手を染めかねないだろう。ただ、薬物事件を起こしたタレントの復帰に際し、その基準が曖昧すぎないかと思っている。

 例えば、09年に酒井法子は覚醒剤取締法違反で逮捕され、有罪判決を受けた。執行猶予3年が開けて、芸能界に復帰することになったが、いまだに地上波で彼女を見かけることはわずかだし、酒井をテレビの世界に戻そうという声を私は聞いたことはない。『5時に夢中!』(TOKYO MX)に出演した酒井は、AVのオファーがあったことを認めていたが、酒井に限らず、薬物を使用した女性芸能人が復帰しようと思ったら、これまでと同じ仕事ではダメで、脱ぐことが暗黙の了解となっていると言えるのではないだろうか。

 しかし、清原氏のように義理人情に彩られた“ものがたり”を持つ人は、復帰を応援してもらえる。そこには、オトコのやんちゃは仕方ないが、オンナのやんちゃは性悪という男尊女卑も絡んでいるように思う。薬物事件を起こした芸能人の復帰が難しいのは、コンプライアンスとは別に、性差別と「お涙頂戴」話が大好きな視聴者心理によって、その基準があいまいになっていることが原因になっているのかもしれない。

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2020/07/09 21:40
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