アク抜きしない、ぎゅうぎゅう絞らない、レンチンでOK! “昔の常識”を打ち破る、瀬尾幸子『素材がわかる料理帖』レシピ
季節の野菜を手に取るたび、この本を開く。「ああ、そうすればいいのか」「あらら、古いやり方を引きずったままだったか」と教えられ、更新マイセルフ。先日はぷりっと張りのあるナスが安かったので、「ナスの甘酢漬け」を試してみた。レンジでチンしてから甘酢に漬けるシンプルなレシピ。うーん……知らなかったなあ、レンジ加熱してもナスっておいしいのか! もっと色合い悪くなると思い込んでいた。「うま味が凝縮して、程よく食感も残り」「なす本来の甘みと香りが引き立ちます」とあるが、まさにまさに。
また、別のページではジャガイモやキャベツのレンチン加熱法とその利点も紹介される。「レンジを使うのは手抜きな気がして……」「あっためなおしでしか使っていない」という人に、ぜひ読んでもらいたいポイントだ。
後半もまた「そうだったのか」がたくさん。「鶏肉に『余分な脂』なんてあるのかしら」や「油揚げの油抜き」などの指摘は読んでいて「ですよねえ!」と口に出してしまった。豚肉の部位別の特徴や、ひき肉についての解説はぜひ知っておいてほしい。買い物するとき、料理するときにかなり役立つから。なお、挽き肉のパートで紹介されるオムレツは玉ねぎや椎茸が入った懐かしい味わいで本当にうまいので、ぜひお試しを。
本書のラストを飾るのは厚揚げ、「お肉の代わりに使うと、いつものメニューも目先が変わります」とある。おお、我が意を得たり。私はカレーに厚揚げいれるの好きなんだ。たっぷり夏野菜と厚揚げのカレー、さっぱりしていいもんですよ。
そうそう、欄外にもマメ知識がちりばめられているんだが、厚揚げの煮もののページには「(干し椎茸は)手で砕けば、水でもどさなくても、すぐに煮始められます」とある。知らなかったなあ。
白央篤司(はくおう・あつし)
フードライター。郷土料理やローカルフードを取材しつつ、 料理に苦手意識を持っている人やがんばりすぎる人に向けて、 より気軽に身近に楽しめるレシピや料理法を紹介。著書に『 自炊力』『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』など。