『ハリー・ポッター』のJ・K・ローリング、突如「私はDVと性暴力からの生還者」と告白! トランス女性に差別発言、出演者からの反発を受けて
実写化された映画シリーズが大ヒットし、世界的大作家となった『ハリー・ポッター』のJ・K・ローリング。同シリーズに登場する、ホグワーツ魔法魔術学校のダンブルドア校長が「ゲイ」であることを告白したり、ファンにTwitterで「魔法魔術学校の生徒に、LGBTQの生徒はいるのか」と聞かれた際には、「もちろん」と回答するなど、長らく、LGBTQフレンドリーな作家と思われてきた。
しかし、2017年に「トランス女性は強姦魔」という内容のツイートに「いいね」を押し、翌年には、女性刑務所に収容されたトランス女性受刑者は女性受刑者を強姦し放題で、「まるで鶏小屋にいるキツネだ」と指摘するツイートにも「いいね」をポチリ。「女性の安全のために、女性専用のスペースにトランス女性を入れるべきではない」といった意見を支持していた。
その後も、トランス女性は「ドレスを着た男性」というツイートに「いいね」を押したことで大いに叩かれて、「更年期のせいで……」と苦しい弁解をした。「『ハリー・ポッター』を読むと、社会的マイノリティに偏見を持たず、差別しない人になる」ととの研究結果が学術雑誌に発表されるほどの物語を生み出した作家だけに、「まさかのTERF(トランスジェンダーを排除するラディカル・フェミニスト)だったなんて!」と批判が上がるようになった。
昨年末も、「男性は女性になれない」「生物学的な性は変えられない」というツイートをして勤務先に解雇された女性を支持し、「好きな服装をし、自分のことを好きなように呼べばいい。合意した大人とだったら、誰と寝たってかまわない。でも生物学的な性は確かに存在する」とツイートし、生まれ持った性別は生涯そのまま変わらないという持論を展開した。
そんなローリングが、6月6日、英ポータルサイト「Devex」に掲載された、「コロナ後の世界を“月経がある人々”にとって、より平等なものにするためには」というオピニオン記事に対して、「“月経のある人”。確か、そういう人たちのことを指す言葉があったわよねぇ。誰か思い出すのを手伝って。Wumben? Wimpund? Woomud?」とツイート。月経があるのはWomanしかいないのに――と、バカにしたようにつぶやいた。
そして、「トランスの人たちには何十年も共感し、親近感も持ってきたわ。女性と同じように弱いから」と述べる一方で、「(私のように)セックス(性/生物学的な性差)は確かに存在すると考えるだけで、トランス嫌いと決めつけるのはナンセンスだわ」と主張。自分はトランスの人々の権利や人生を尊重しており、「トランスを理由に差別されるのなら一緒にデモ行進だってする」「でも同時に、私の人生は女性であることによって形作られてきたわけで、そのことを言うのはヘイトだとは思わない」と語り、長年の考えは変わらないと改めて主張。
「この3年、トランスの人たちや医師、ジェンダーの専門家が書いた本やブログ、科学誌を読んできた」からトランスの特質を熟知していると断言。「自分と違う考えを持っているからって、その人が何も知らないだなんて思わないことね」と強気にツイートした。
この投稿はたちまち注目され、「トランス女性も女性!」「閉経した女性、病気で子宮をとったら女性は生理ないけど、彼女たちはもう女性じゃないってこと!?」などのバッシングが殺到。「ローリングはTERF!」「トランスフォビックだ」と大炎上した。
ののしられてもローリングは謝罪をせず、「フェミナチ、TERF、ビッチ、ウィッチ(魔女)。時代は変わるけど、女性に対するヘイトは永遠ね」とあきれたようにツイート。それがますます反発を呼び、「『ハリー・ポッター』が嫌いになった」「“生徒の中にLGBTいる”とか言ってたけど、別に同性愛が描かれているわけじゃないし」「もうあの本、読みたくない。捨てる」といった意見がネット上に飛び交うようになってしまった。
この騒ぎを受け、8日、映画化シリーズで主人公ハリー・ポッターを演じたダニエル・ラドクリフが、LGBTQの若者の自殺防止に取り組む非営利団体「The Trevor Project」の公式ウェブサイトにエッセイを寄稿。「マスコミは僕と彼女の内輪もめみたく書き立てたがるだろうけど、違うからね」と前置きした上で、「トランス女性は女性だよ」と明言。ローリングの発言があっても、『ハリー・ポッター』シリーズを嫌いにならないでほしいと呼びかけた。
その後、ハーマイオニー・グレンジャー役のエマ・ワトソンも、「トランス女性は女性」と、トランス側への支持を表明。
『ハリー・ポッター』のスピンオフシリーズである、映画『ファンタスティック・ビースト』シリーズの主人公ニュート・スキャマンダーを演じたエディ・レッドメインも、10日、米誌「Variety」に「ジョー(ローリング)の意見と僕の意見は合わない」「トランス女性は女性。トランス男性は男性だ」という声明を発表した。
そんな渦中のローリングだが、Twitterでの炎上が終息しないからか、10日、自身のブログで「家庭内暴力(DV)と性暴力に遭った過去がある。被害者ではなく生還者よ」「思い出すことがトラウマになるから今まで言わなかったけど」と突然告白。
「トランスジェンダーの活動家からののしられ、脅されている」とし、多くの女性がトランスジェンダーの活動家を恐れていると持論を展開。「自分にも複雑な過去があるから」若い頃、性について悩み、長年トランスジェンダーに関する問題について考えてきたと述べ、「今回、DVと性暴力に遭った過去をカミングアウトしたのは、女性専用のスペースにトランス女性が加わることに対して懸念を抱いているため、中傷や偏見を持たれる、自分のような過去を持つたくさんの女性たちと連帯を強めたかったから」と説明した。
ローリングは自身の件について、加害者などの詳細は明かしていないが、彼女にとって「生物学的な性」の強さを思い知らされた体験だったのだろう。また、そのトラウマから、女性専用のスペースにトランス女性が加わることを嫌がるようになったのかもしれない。
しかし、6月はLGBTQの権利向上を掲げるプライド月間であり、また世界中で人種差別反対デモ活動が巻き起こっていることもあり、「ローリングはトランスフォビア」「TERF」「トランスを差別するシスジェンダーだ」といったバッシングは当分収まりそうにない。これまで友好的な関係を築いてきた作品の出演者たちからも反発されているローリングだが、今後、この議論は、どのように展開していくのだろうか?