カルチャー
シビアな現状

「9月入学制度」は見送りも「現状でギリギリ」と教員たちが悲鳴! 学校再開で見過ごされる課題

2020/05/29 16:00
昼間たかし(ひるま・たかし)
Andrea Chu / DigitalVision / Getty Images

「どさくさに紛れて9月入学なんて話も出ていますけれど、実現するわけがない。それよりも今年をどう乗り切ればいいのか」

 首都圏でも緊急事態宣言が解除され、今週末あるいは6月1日からの小中高校の授業再開に向けて教育現場では準備が進められている。今回、新型コロナウイルスの感染拡大で学校が長期休校したことで、政府や識者からは「9月入学制度」の導入を検討する声まで出てきた。降って湧いたこの案は、27日に2021年度からの導入を見送る方針で固めたことが明らかになった。

 一時は盛り上がった9月入学制度だが、教育現場には、歓迎する声はまったくなかったどころか「現場を知らない勝手な話」とでもいうべき怒りすら聞かれた。

「9月入学なんて、実現するとはまったく思えませんね。これまでの学習指導要領に則った授業計画はもちろん、学校の年間行事の流れまですべて見直さなければなりません。教員全員が、授業も何もせず、移行の準備だけすればいいんだったらできるかもしれませんけどね」

 そう話すのは、都内の小学校教師。都内の小学校では1クラスの人数が40人に近く、ソーシャルディスタンスなんて不可能というところもざら。クラスを2つに分けて行う分散授業や時差通学を導入する予定で、感染リスクを高める「3密」もある程度はクリアされそうだ。それでもまだまだ問題は尽きない。

「登校時に生徒の体温結果や体調を把握するといいますが、現時点でも教員は朝から授業準備や事務仕事で時間はギリギリです。どうやって時間を割けばいいというのでしょう」(同)

 まだ都内では実施されていないものの、何人かの都内公立学校の教員に聞いたところ、小学校で噴出する問題はだいたい予想できるというのだ。検温したり、健康チェックを行う間に騒ぎ出す生徒。また、新学期シーズンがズレたことで、必ず「学校に行きたくない」という生徒も出てくるだろう。そんな子どもが親に引きずられてやってきて、校門で泣きだしてしまうという十数年来定番の光景も、今年は急増することは織り込み済み。教員不足が叫ばれている中で分散登校を導入した結果、少人数になったクラスで従来通りの教育ができるとは言い難いだろう。

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