安達祐実も「ロリババア」を自称……「私はババア」と言いたがる女性の心理とは?
現在放送中の連続ドラマ『捨ててよ、安達さん。』(テレビ東京系)で、10年ぶりに地上波連続ドラマの主演を務めている安達祐実。もともと童顔の安達は、現在38歳ながら、ネット上で「20代にしか見えない」「10代でも通用する」と言われるなど、そのエイジレスな魅力で人気を博しているが、中には、安達を「少女のような見た目だが実年齢は上のキャラクター」といった意味を持つ「ロリババア」と指摘する者も少なくない。
安達自身、そういったネットの反応を知っていたようで、女性誌「ELLE Japan」(ハースト婦人画報社)のYouTubeチャンネル動画に出演した際、「ロリババアと言われることが多い」と言及。さらに「こんなに言っていただけるなら、自ら名乗ろうと思って」と、「LORIBBA」と印字されたスマホケースを公開した。
蔑称のイメージが強い「ババア」を安達自ら名乗るという行為は、ネット上で「器がでかい」「面白い」「気取ってなくて素敵」などと大ウケしているようだが、一般の、しかも若年層の中にも「自称ババア」の女性は少なからずいるのではないだろうか。サイゾーウーマンでは、過去に「なぜ彼女たちは『私はババア』と言いたがるのか」に迫るインタビューを行っていた。社会学者・鈴木涼美氏と歴史社会学者・田中ひかる氏は、この現象をどう見るのか。今回、あらためて再掲したい。
(編集部)
(初出:2018年3月14日)
なぜ女は「私はババア」と言いたがる? 自虐をせずにはいられない女たちの深いワケ
「私、ババアだから」
最近、自分のことを「ババア」と呼ぶ女性に会ったことはないだろうか。もしかすると、「私も言ってる」という人も少なくないのかもしれない。三省堂『デイリーコンサイス国語辞典』で、「ババア」は「女の老人 *多くののしって言う語」と説明されており、ババアを自称する女性は、自虐的にそう言っているのだろうが、着目したいのは、まったく“老人”には当たらない女性たちまでもがババアを名乗っている点である。中年とされる40代、青年・壮年期とされる20~30代、はたまた高校生の女子までもが「私はババア」と言うこの現象は、なぜ生まれたのだろうか。
自己防御とナルシシズムを感じる
『オンナの値段』(講談社)などの著書で知られる社会学者・鈴木涼美氏は、「ババア」と自称する女性の心理について、次のような見解を述べる。
「人から言われて傷つくことを、最初から排除するために、批判の口封じをしているような気がしますね。例えばSNSで可愛く撮れた自撮りを載せるとき、『ババアの自撮りです』って言ったら、『ババアのくせに』という悪口は言えなくなる。たとえ言われても、『自分がババアなの知ってます』と反論できます。ある種、批判に対してすごく臆病で、最初から人の意見をシャットアウトしてる印象があります。コメンテーターが『こういう犯罪を起こす人は、こういう人が多いと思います』などと意見を述べるときに、『私見ですが』と前置きする場合がありますが、それは発言が元で裁判になったりした際に、釈明できるから。自称『ババア』はそれを応用していると思います。ただ、『ババア』うんぬんが、裁判に発展するなんてことはないので、その人の臆病さをより感じてしまうんですね」
また、特に若い世代が「ババア」を自称するケースには、“上から目線”の要素も垣間見えるという。
「年下の子をけん制し、バカにするっていう気持ちも、ちょっとあるんではないかなと思っています。『私はもう大人だよ』『私のが上だよ』というのを、『ババア』という言葉で自虐交じりに言うことで、嫌みっぽく聞こえなくして、マウンティングしているというか。彼女たちが言う『ババア』って、単純に“年齢が上”のことを言っていると思います。『20代の子は肌がピチピチでいいわね、私なんて30代のババアだから』と言うとき、素直に羨ましいという気持ちもありつつ、私にはあなたにはない経験があると優越感に浸っているような。そうじゃないと、自ら『ババアババア』なんて言わないですよ」
鈴木氏は、自称「ババア」女性のメンタリティに、「自己防御とナルシシズムのミックス」を感じるといい、そうした女性を「苦手」と語る。
「今の女性にとって、『痛い』って一番嫌がる事態。痛いとは、自分がどう見えてるかを自覚できていない状態を指すと思うんですが、その痛さを回避するために、『私は自分のことをちゃんと理解しています』とアピールしようとしているのかな、と。ただ私には、痛さを回避しすぎるがゆえに、相手とのコミュニケーションを断絶しているように見えてしまうんです」
SNS、とりわけ今主流のインスタグラムは「痛くなりやすい場所」(鈴木氏)でもあるという。確かに、芸能人が自撮り写真やブランドものの写真を載せ、「なぜそれをアップしたのか?」「自慢?」などと批判的に見られてしまうことはよくある。そうした背景によって、女性が自分に対して“自覚的である”ことを、よりいっそうアピールする現象が起こっているのかもしれない。