「第2のユニクロ」ワークマンの落とし穴……「コロナ禍でも好調」とはやし立てるのは危険なワケ
--ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!
新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向にあり、4月に出された非常事態宣言が全面解除されました。
コロナ禍によって全国的に休業となった大型商業施設や百貨店。当然、多くのアパレルブランドも約2カ月まったく売上高が望めない状態が続きました。このため、4月度のアパレル各社の月次売上速報は「軒並み大幅減少」でしたが、ワークマンの既存店売上高は前期比5.7%の増収で(ちなみに4月時点での店舗数は868店舗、客単価は前期比2.2%減)、世間をアッと驚かせたのです。今回はワークマンの増収の理由について考えてみたいと思います。
ワークマン増収は「しまむらの落ち込みが少なかった」のと同じ理由?
アパレル企業は数多くありますが、上場している企業は母数の割にあまり多くありません。そのため、月次速報を公開している企業も同様に、あまり多くないのですが、各社とも、4月度の売上速報は惨憺たる有様でした。その中で前年比増だった企業が2社あります。それは今回取り上げるワークマンと子ども服・用品の西松屋。西松屋の既存店は、売上高が前期比2.1%増となりました。
なぜこの2社がコロナ禍で前年比増だったのか。それは、これまで「苦戦」「失速」「凋落」と言われて続けてきた、しまむらが、比較的落ち込みが少なかった理由と共通しています。
しまむらの4月既存店は前期比28.1%減で踏みとどまっていたのですが、その背景には、休業店舗が5月7日時点で、全1432店中たったの26店だったことに起因します。例えば、ユニクロは、約820店中、4月は最大で311店が休業、299店で営業時短を実施し、まともに稼働していたのは約250店しかなかったため、4月度売上高56.5%減。またユナイテッドアローズは、全242店中、4月8日から179店を休業、順次休業店は増え、「4月末時点の営業店舗はアウトレット1店舗のみ」(広報担当者)とあって、ほぼ営業停止状態に。結果的に、4月度売上高は同62.4%減と落ち込みました。またアダストリアは4月8日から国内約1240店中半数が休業、4月末時点では全店休業となり、4月既存店売上は同67.8%減でした。
このように、休業店舗数を比較すると、しまむらが圧倒的に少ないことがわかります。しまむらは、商業施設より主にロードサイドに出店をしているため、店を閉めなくてもよかったというわけです。
これと同じことが、ワークマンと西松屋にも言えます。ワークマンも西松屋も、メインは、ロードサイド路面店で、都心百貨店やファッションビルにはほとんど出店していません。ですから、東京都や大阪府を対象とした非常事態宣言による休業の影響を最も受けにくかったと言えます。
筆者は関西の郊外に住んでいますが、最寄り駅の隣駅から歩いて数分のところに小規模なワークマンの路面店があり、ここは4月も、5月の連休もずっと営業をしていました。おそらくほかの郊外路面店も同様だったと考えられます。