万引きGメンが「痴漢」を捕らえた! 衣料品売り場を匍匐前進、「露出狂の男」との緊迫の一幕
「いま、どこにいますか?」
「4階におりますが、どうされました?」
クレームかしらと、恐る恐る用件を尋ねてみれば、興奮した様子の店長に早口でまくしたてられます。
「衣料品担当の女性スタッフを狙った痴漢らしき男がきているので、大至急、2階に向かってください。ベージュのトレンチコートを着た30歳くらいの男です。何度かやられているので、犯行の現認ができたら捕捉してもらえますか? 私も、近くで警備員と警戒しておきますので、お願いします」
「はい、了解です」
格好よく返事をしたものの、痴漢の捕捉は容易ではありません。万引き犯に比べて警戒心が強く、たとえ首尾よく犯行を現認できたとしても、捕捉時には暴れ、容疑を否認したり証拠隠滅を図ることが多いのです。恐怖と緊張からくる胸の鈍痛を堪えながら、エスカレーターで2階に駆け下りて、それとなく売場を見回すと、トレンチコートの男はすぐに見つかりました。気付かれぬよう遠目から人着(犯人の人相や着衣)を確認すると、どことなく「霜降り明星」のせいやさんに似た20代後半と思しき太めの男で、その視線の先には、女優の永作博美さんに似た雰囲気の小柄で可愛らしい女性スタッフが品出しをしています。男の顔を見れば、荒い息遣いが聞こえてきそうなほど紅潮しており、顔全体が脂汗でテカついているように見えました。
(あんなにいやらしい目で見られたら、誰でもゾッとするわよ……)
まったく尋常ではない男の目つきに強い犯意を感じた私は、人気のない婦人服売場に潜む形で、男の行動を見守ります。するとまもなく、品出しを終えた女性スタッフが、店の奥にあるレジカウンターの中に入りました。それに合わせて、トレンチコートの裾を両腕で抱えるようにして動き出した男は、尋常でないほどにギラついた目で周囲を気にしながらレジカウンターに忍び寄っていきます。
(どこから見ようかしら)
できることなら正面から見たいところですが、衣料品売場の棚は低く、自分の姿を見せずに近づく方法が見つかりません。周囲に誰もいないことを確認した私は、棚の陰で俯せになって、男のそばにあるラウンドハンガーまで匍匐前進の要領で移動しました。確実な現認が取れるなら、これくらいのことは平気なのです。
「キャーッツ!」
そうしてまもなく、不意に轟いた大きな悲鳴に驚いて視線を上げると、レジカウンターの前に立ち尽くした男が両手でコートを広げていました。コートの下には何も身につけておらず、まるで蝙蝠のような格好で、自身の陰部を女性スタッフに見せつけています。
「あなた、なにやっているのよ!」
捕まえるべく足元から立ち上がると、目玉が飛び出てしまうのではないかと思うくらいに驚いた男は、その場に尻餅をつきました。すぐに駆けつけてきた店長と2人の制服警備員が、自慢にもならない大きさのイチモツをさらして床に寝転ぶ男を取り囲んで見下ろします。