コラム
オンナ万引きGメン日誌

万引きGメンが「痴漢」を捕らえた! 衣料品売り場を匍匐前進、「露出狂の男」との緊迫の一幕

2020/05/09 16:00
澄江(保安員)
写真ACからの写真

 こんにちは、保安員の澄江です。

 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が、もう1カ月延長されることとなり、自粛要請が続いています。つい先週までは、普段と変わらない状態で勤務して参りましたが、勤務地周辺で感染者が出たことを理由に、同僚数人が出勤をボイコットしたことで状況は一変。ようやく事態の重さに気付いたらしい会社は、ほとんどの職員を休職させることに決めました。ある程度の手当は出るようですが充分ではなく、国から助成金をもらったところで、これまでの蓄えを放出しなければならない状況になりそうです。いつ終息するかもわからないので、正直なところを言えば、ほかの仕事を探してみようかと考えることも多くなりました。しかし、自分にできる仕事と言えばスーパーの店員くらいしか思い浮かばず、いまの仕事を続けていくことと大差はありません。生きる残るためにと、現場に出してもらうよう会社に願い出た私は、かろうじて以前と変わらぬ生活を維持できています。その甲斐あってか、つい先日は、一人の女性を救うことができました。今回は、その時のことについてお話ししたいと思います。

 当日の現場は、関東近県の郊外にある大型ショッピングモールE。1階に食品売場とフードコート、2階に衣料品、3階に日用品と玩具、4階に家電売場を擁する大きな店舗です。広大な売場は死角だらけの上に、防犯機器の設置は少なくスタッフの数もまばらで、どこで何が起こってもおかしくない状況にあると言えるでしょう。

 初夏を思わせる陽気の中、電車とバスを乗り継いで1時間ほどかけて現場に到着した私は、挨拶を済ませて入店すると同時に、緊急事態の最中とは思えぬ客入りの多さに愕然としました。店内のフードコートや休憩所には、多くの学生さんたちや家族連れがたむろしており、休日以上の混雑ぶりを見せていたのです。その光景を見れば、呼吸するのも憚られるほどで、この場にいるだけでたちまちに感染してしまうような気にさせられます。この仕事を始めて、すでに41年が経過しておりますが、これほどまでに強い危機感を抱きながら現場に立つことはありませんでした。なるべく人の多いところで警戒にあたるのが巡回の基本と言えますが、自分の生命を守ることを第一に考え、いわゆる「密」の状況を回避するべく、人気の少ない1階以外のフロアを中心に巡回することにします。

(まだ、こんな時間か。どこの店も、食品売場以外は平和なのよね……)

 普段とは違って人気のない売場に身を潜めているため、なにも見るものがなく、いつも以上に時間の経過が長く感じられます。特に目立った不審者を見かけることもないまま、業務が終盤に差し掛かると、自分のスマートフォンに店長さんから電話がかかってきました。

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