美容・健康
インタビュー

「セルフハイフは危険」の風潮に疑問!? 医師が「美容医療、高額すぎる」問題を斬る

2020/05/04 16:00
高尚威(こう・しょうい)医師
写真ACからの写真

 今年2月、消費者問題・暮らしの問題に取り組む独立行政法人「国民生活センター」から、近年、神経損傷や火傷の相談が増えているとして、「セルフハイフ」への注意喚起が行われた。このハイフとは、美容クリニックで行われている、高密度焦点式超音波を用いた「たるみ・小顔治療」だが、近年ではエステサロン界にも広まっており、そんな中で、自ら施術を行うセルフハイフが登場した流れだ。

 セルフハイフの特徴は、何と言っても値段の安さ。クリニックでは一般的に、1回10〜20万円、機器の種類によっては30〜40万円することも珍しくないが、セルフだと1回3,000円程度というケースも。しかし安いからと言って、危険度の高い施術を受けるのは避けたいという心理が働くが、美容クリニックの医師たちは、これをどう見ているのだろうか? 前回は、セルフハイフでの神経損傷や火傷がいかにして起こるのかについて着目したが、今回、東京美容医療クリニック院長・高尚威先生に見解をお聞きしたところ、「私は『セルフハイフは絶対ダメ』という派ではないです」という意見が飛び出した。

セルフよりエステティシャンによる施術のほうが「危険」!?

 ハイフ自体には、確かに神経損傷や火傷のリスクはあるというものの、高先生は、大手セルフハイフサロンは「それなりにちゃんとした機器を使っているのではないか」と見解を述べる。

「エステ用のハイフは、基本的に、医療用のものより出力が低くなければいけません。というのも、ハイフは皮下組織に直接熱エネルギーを加え、“組織を変性”させることによって、たるみを改善するものなのですが、これは医療行為であり、エステで行うと医師法に触れてしまう。つまり、組織を変性させない程度……まぁ、脂肪層をちょっと温めて、一瞬キュッとさせるくらいでなくてはいけないのです。しかし実際には、海外の展示会などで、型落ちになった安価な医療用ハイフを購入し、エステティシャンが勝手に高出力で施術を行っているエステサロンがいっぱいあるんですよ。一方で、全国にフランチャイズ展開しているようなセルフハイフサロンは、事故が起こった際に責任を負うリスクを避けるため、こうした違法性が生じかねない機器は使用していないと思います」

 高先生は、セルフハイフサロンより、エステティシャンが医療用ハイフを使用するエステサロンのほうが「危険度は高いのではないか」という。

「大手セルフハイフサロンで使用されているのは、シャワー型ハイフというものです。もともと低出力に設定されているのに加え、もし火傷しそうになった場合、強い痛みを感じるので、その瞬間にハイフの先端を皮膚から離せば、大きな火傷にはならないと思います。また神経損傷に関しては、どれくらいのレベルかにもよりますが、事前に、皮下の浅いところに神経が通っている部位は『打たないように』と、説明を行えば、避けられるのではないでしょうか。何よりもスタッフ教育、マニュアル周知の徹底が重要だと感じますね」

 とは言っても、実際に、セルフハイフによる事故例が報告されているわけだが、高先生いわく、セルフに限らずハイフ全般において、「ハンドピースに個体差があること」が、その主たる要因になっているのではないかとのこと。

「ハンドピースは、中国で大量生産されているのですが、品質検査を行う際に、板で行うんです。実際の皮膚に使うには、さらに高い品質が求められますが、板という『固体』と『皮膚』の差によって、問題が起きていることは考えられますね。ハンドピースの先を新しいものに変えたら、急に出力が高くなってしまうといったことが起こるんですよ。そうすると、マニュアル通りにセルフハイフの施術を行っていても、事故が起こる可能性はある。まぁでもこれは、クリニックでも起こりうること。それは部品を供給する側の問題と言え、検品の精度を上げるなどの対応が必要となります」

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