コラム
オンナ万引きGメン日誌
ホームレスの女装万引き犯は、鼻の頭が割れていた……「これで人生台無しよ」Gメンに漏らした過去
2020/04/25 16:00
埒が明かないので、腰元を掴んで少し強引に歩き始めると、意外と素直に歩を進めてくれました。事務所までの道中に逃げられぬよう、気を逸らすべく、いくつかの質問をぶつけてみます。
「化粧品は、ご自分で使うためですか?」
「うん。コロナで、いつ死ぬかわからないから、きれいにしておきたくてね」
「お家は、あります?」
「そこの川に住んでいるのよ。ダンボールじゃなく、トタンの家なの」
そんな会話をしながら事務所に向かい、応接テーブルに盗んだ商品を出させると、計7点、合計8,000円ほどの商品が出てきました。話を聞けば、ここからほど近い河原で暮らしているという男性は57歳。一文無しの上に、身寄りはなく、商品代金を立て替えてくれるような人も用意できないと話しています。ふと、前に座る男性の顔を見つめれば、鼻がぺちゃんこに潰れており、鼻の頭が二つに割れていました。しばし、目を奪われていると、私の視線に気付いた男性が恥ずかしそうに言います。
「整形で失敗しちゃったの。安いとこはダメね。これで人生台無しよ」
その後、警察に引き渡された男性は簡易送致処分とされ、店内で実況見分を行うことになりました。犯行状況を明確にするため、盗んだ商品の陳列棚や商品を隠した場所、捕まえられた場所などを指差した写真が撮影されます。
「そこを指差したまま、こっち向いて」
「はい」
すると、あろうことか満面の笑みを浮かべた男性は、警察官に向かってピースサインを突き出して見せました。
「おい。お前、舐めてんのか?」
息子ほど年齢の離れた警察官に怒られた男性が、肩をすくめると同時に、胸が大きくズレておかしかったです。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)
最終更新:2020/04/25 16:00