「春夏物が壊滅的に売れない」……新型コロナで大打撃のアパレル業界、「大量在庫」をどうする?
しかし、現実的には在庫を消化するための施策としては、ネット通販も処分業者への払い下げも決め手に欠けます。
まずネット通販についてですが、いくら売上高が好調といっても、大手の実店舗販売金額の落ち込みを補填できるほどの規模ではありません。例えば、先ほど例に挙げたユナイテッドアローズだと、EC売上高が23.8%増にもかかわらず、実店舗との合計売上高は前年同月比74.7%と減少しています。これはすなわち実店舗の落ち込み分を、ネット通販の増加率程度ではカバーできないということを示しているのです。
確かに、小規模業者なら、ネットで何千万円か増収できれば業績は好転しますが、ユナイテッドアローズやそれ以上の大手になると、難しいというのが実情です。
一方、在庫処分業者への払い下げにも難点があります。主な在庫処分方法は、
・他社に卸売りする
・直営店舗で販売する
・ネット通販で販売する
・海外に売る
という4つですが、このうち、ネット通販以外、新型コロナの影響を受けて不振であることは正規アパレルと同じだからです。他社に売ると言っても、他社も同じく不調ですし、また直営店販売も同様で、街には人通り自体が減っている状況。私が個人的に手伝っている在庫処分業者の直営店は、4月の売上高がピーク時の半減以下で推移しています。さらに海外販売と言っても、海外も日本同様新型コロナで経済活動が止まっているわけです。
ネット販売だけが活路ですが、残念ながら各在庫処分業者のネット通販は、そこまで強力ではありません。売上高はせいぜい大きく見積もっても数億円という程度で、とてもではないですが何十万枚の在庫をさばける規模ではない。つまり、正規アパレル企業にとって、「在庫処分業者に払い下げればとりあえず安心」という状況ではないと言えるでしょう。
そうなると、アパレルの在庫処分は、もはや“事態の終息後”、自社店舗ないし正規ネット通販でどれだけ投げ売りすることができるかが決め手となります。しかし、投げ売り処分は、想定していた売上高を大幅に下回るのは必至。それをカバーすべく、秋冬の商品は大幅に生産数量を減らすことになると思われます。アパレルは、新型コロナの影響によって、初めて業界を挙げての生産調整に突入することになりそうです。
(南充浩)