『ザ・ノンフィクション』鈍感さの弱みと強み「52歳でクビになりました。~クズ芸人の生きる道~」
日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。4月19日の放送は「52歳でクビになりました。~クズ芸人の生きる道~」。
あらすじ
小堀敏夫52歳、独身。貯金ゼロ、家賃2万8,000円のアパートに住んでいる。ワハハ本舗に所属する芸人で「ガッポリ建設」というコンビを組んでいるが、相方は今はカタギの仕事についており、実質ピン芸人だ。しかし小堀はネタを書かず、パチスロばかりの生活を送る。収入源は、昨今世間で話題になった「ギャラ飲み」だ。多いときには月15~20回ギャラ飲みをこなし、バイトなしでも生活できているという。
ワハハ本舗ではお笑いライブが開かれており、売れない芸人たちはネタ見せ会で主宰の喰始(たべ・はじめ)にアイディアをもらって、芸を磨いていく。小堀も参加はするが、その場を「アウェイ」と呼び、やる気はない。長年、小堀のダメっぷりを見逃してきた喰だが、「体調不良」という見え透いた嘘でネタ見せ会のドタキャンを繰り返す小堀に、堪忍袋の緒が切れ、契約解除を通達する。小堀は芸人を辞めず、若手芸人に交じりコンテストに出場したり女装芸人として芸人活動を続けている。
52歳の無名芸人だが悲壮感は皆無
小堀は、かなりよく言えば遠藤憲一と板尾創路を足して2で割ったような容貌だ。見切り品の弁当とカップ麺という偏った食生活を送っているが、52歳にしては若く見える。
小堀は、40代まで父親から仕送りを受けていたという。パチスロで全財産が300円になると、後輩芸人に金を借りに行っていた。小堀は、金を借りるのがうまい。「申し訳ない」「情けない」「恥ずかしい」といった感じが一切ないのだ。堂々と、あっけらかんと金を借りる姿には陰鬱さや悲壮感がない。
小堀には「他人の目を気にする」ことがあまりないのだろう。ワハハ本舗をクビになり女装芸人へ転身しようとゲイバーを訪ねた際も、店のママから履歴書がないことや女装して来ないことを呆れられ、ほぼ門前払いの扱いを受ける。しかし、そこで「気まずいから、あの店はやめてほかのゲイバーに行こう」とは思わず、同じ店に女装姿で再挑戦して採用される。お笑い芸人コンテストに出た際も、自分より二回り近く年下であろう若手芸人たちに臆することなく、「ガッポリ建設を知ってるか」と話しかけ、気まずそうにする若手芸人の様子も意に介さない。
いい加減でだらしないが、他人の目を気にしない小堀は「鈍感力」が突き抜けているのだろう。番組内で見る限り、小堀はギャラ飲みで大して面白いことを言っているように見えなかったが、「気楽に飲めていい」と思う人もいるのかもしれない。