今年の夏は浴衣が着たくなる!? 着物のプロが語る、コーディネートのポイント「小物使いでメッセージ性を」
「その着付けはなっちゃいない」「その着物にその帯はおかしい」――着物で街を歩いているときに、こんなふうに“着物警察”に摘発されたという声が後を絶たない。そんな状況に対し、「着物警察なんて怖がらず、好きに着ていい」と力強いメッセージを『マツコの知らない世界』(TBS系)で打ち出したのが、目黒にある「時代布と時代衣裳 池田」で店主を務める池田由紀子氏だ。インタビュー後編では、着物デザイナー・池田重子氏の娘でもある池田氏に、着物コーディネートのコツについて話を聞いた。
*インタビュー前編はこちらから
五千円札・樋口一葉にならうコーデのポイント
――前編で「洋服選びと同じように、着たい着物を自由に着ればいい」というお話を伺い、「着物警察は怖くない」と希望が湧いてきております。本日の池田さんのコーディネートのポイントについて教えてください。
池田由紀子氏(以下、池田) 私の今日の服装はもうすぐ桜が咲くということ(取材は3月中旬)で、桜の半襟を、また帯にも桜がついています。それから「梅に鶯」というように、桜には鳩というのが定番なので、鳩の帯留めを使いました。
――可愛いですね!
池田 そう言ってほしくて(笑)。秋は茶色い着物を着ることが多いんですが、今は緑の季節ですから、緑でまとめてみました。
――色や柄で季節を表現するのも、着物をおしゃれに着こなすポイントということですね。
池田 はい。前編でも紹介した五千円札の樋口一葉さんは、とても貧しい生活をされていました。花街の近くにお住まいになり、縫い物で生計を立てていたそうです。花街の方の華やかな着物の繕いをしながら、自分は無地の着物に無地の羽織しか着られない……。若い樋口さんは寂しかったでしょうね。
五千円札の樋口さんの着物と羽織は無地ですが、半襟には柄がついています。こちらは何かの着物の有り布(ありぎれ。はぎれのこと)なのだと思います。襟にだけでも柄をつけて華やかにしたいという、女心の表れではないでしょうか。
着物はいろいろなところにメッセージを託せますから、お洋服より、メッセージ性は強いと思います。着物の形は全て同じなので、より柄や帯留めの形などに込められた意味が伝わりやすいのかもしれませんね。