サイゾーウーマンカルチャーインタビュー弁護士が「炎上有名人」のSNSを斬る カルチャー 弁護士・清水陽平氏インタビュー はあちゅう氏の「血クレ」反論は“論外”――ネット中傷対策の弁護士が「炎上有名人」のSNS投稿を斬る 2020/03/25 11:40 安楽由紀子 インタビュー はあちゅう氏の言う「誹謗中傷」は名誉感情の問題? ――はあちゅう氏は、19年10月5日に「匿名で誹謗中傷をしてくる人に対しては、慰謝料もだけど、顔写真と名前を公開する刑でいいと個人的には思う」とツイートしています。SNSでは「反対意見」と「誹謗中傷」の境目があやふやになっている印象があるのですが、そもそも「誹謗中傷」とは法的にどのように定義されているのでしょうか。 清水 「誹謗中傷」は法的概念ではありません。誹謗中傷を法的に言うと、プライバシー権侵害、名誉権侵害、名誉感情の侵害のどれかに当たると思います。プライバシー権侵害は、個人の生活などを勝手に公開すること。本人が発信しているものは構いませんが、本人が発信してないものを勝手に公開すれば、プライバシー権の侵害になります。名誉権侵害は、簡単に言うと「社会的評価を下げる」情報を発信すること。社会的評価の低下をわかりやすく説明すると、他者に「この人と付き合いたくない」と思われるかどうか。例えば「この人は犯罪者です」「詐欺をしています」「不倫しています」などとネットに書かれたら、社会的評価が下がりますよね。名誉感情の侵害というのは、本人が不快に感じる言葉などを発信することです。 ――プライバシー権侵害、名誉権侵害、名誉感情の侵害に当たらなければ、誹謗中傷ではないと考えられますが、例えば「バカ」「アホ」「ブス」「嫌い」などの中傷は違法なのでしょうか。 清水 「バカ」「アホ」「ブス」「嫌い」などと書かれた人は、不快な思いをするでしょう。これは、名誉感情の問題で、侵害か否かは、「本人が不快に思うかどうか」によります。しかしそうなると、なんでもかんでも名誉感情の侵害になり、他人が意見を言えなくなることも考えられる。なので、名誉感情は法的な概念としては存在しているものの、「誰が見ても言いすぎだ」というレベルにまで達していなければ、名誉感情の侵害は成立しません。なお、はあちゅう氏が「誹謗中傷」と捉えているのは、ほとんどが名誉感情の問題だと思います。 ――となると、名誉感情を侵害されたとして訴えても、勝ち目はあまりないということですか。言われ損のような気もします。 清水 そうですね。「殺害予告」と同レベルくらいの中傷でないと厳しいと思います。「殺す」というのは脅迫罪。「死ね」「死んでほしい」は名誉感情侵害の可能性がありますが、単に「死ね」ではなく「めった刺しにしたい」などの表現ではないと、訴えるのは難しい。実際、こうしたネット上の攻撃に悩んで、ご相談に来られる方はとても多いのですが……。 また、専用のアンチアカウントに対処したいという相談も多いものの、そのアカウントのツイート内容をよく見てみると、アカウント本人が発信しているのではなく、アンチコメントをひたすらリツイートしているばかりのものも多い。そうすると、法的に対処するのは難しい状況です。 ――ちなみに有名人の炎上騒動が起こると、テレビ局やスポンサー企業に電話をかけて「このタレントを降板させろ」などと要求する一般人もいるようですが……。 清水 その相談も多いのですが、法的に取り締まることは難しいです。 ――結局、有名人は、ある程度の批判や中傷は、スルーするしかないかもしれませんね。 清水 有名人が不快になるようなことをあえて送りつけ「ストレス発散」している人、また、批判を言うことで、独りよがりな正義感を暴走させる人もいると思います。有名人は、そういった意見に対し、冷静に反対意見を発信するのは構いませんが、感情的に返すと、やはり炎上しやすい。全ての人に好意的に受け止められることはないと、ある程度割り切ってもいいのかもしれませんね。 (取材・文=安楽由紀子) 清水陽平(しみず・ようへい) 2010年法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除・発信者情報開示請求や、ネット炎上対応などを得意分野とする。著書に『サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル第3版』(弘文堂)、『企業を守る ネット炎上対応の実務』(学陽書房)などがある。 ・法律事務所アルシエン 前のページ123 最終更新:2020/03/25 14:01 Yahoo サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル 第3版/清水陽平 炎上を起こさず反論する方法もあるんだね 関連記事 キャベツ枕、手作り目薬――「自然派ママ」炎上、「正義が悪を罰する構図」を小児科医が危惧するワケグルタチオン配合の「白玉点滴」「美白サプリ」はニセ医学? 医師に聞く「証拠はほぼない」恐るべき実態フォースコリー、メリロート、はとむぎエキス……専門家が「人気美容サプリ」の落とし穴を解説iHerbで購入できてしまう、3つの「危険な海外サプリ」! 専門家が注意点を徹底解説ダイソー100円サプリ「ギャバ」は「根拠なし」「薄めただけのもの」!? 専門家が大ヒットの裏を読む 次の記事 横浜流星の「ファン離れ」を関係者が懸念 >