新型コロナで開催揺れる東京五輪、パラ・メンタルコーチが「選手の心身」に及ぼす影響を解説
――各国の人間が衣食住を行う選手村が、ウイルスの温床になる可能性は容易に想像できます。
木村 ただ、選手はこの4年に一度の五輪の時期にピークを合わせて調整してきてるでしょうし、もし延期となれば選手の再選考を考える可能性も出てきます。ですので、ここについては、身体的な危険度と選手たちのこの4年に懸けてきた思い、その両方をしっかり吟味した上での結論であることが必要です。
会場の準備や各選手のさまざまな手続きを踏まえると、IOC(国際オリンピック委員会)は、5月下旬までに開催を決めるとのことでした。前回のSARS(重症急性呼吸器症候群)は、約8,500人の方が罹患し、終息宣言までに約8カ月かかっています。今回の新型コロナウイルスはまだ3カ月で、8カ月後はオリンピック開催期間の真っ只中。そう考えると、非常に悩ましいところです。
――開催可否の判断にあたり、パラリンピックの関係者として木村さん個人が伝えたいことはありますか?
木村 この4年間、選手及びスタッフがどんな思いで練習してきたのか、その「気持ち」についても十分考慮していただきたいです。健康第一はもちろんのこと。それには一刻も早い終息が、鍵となってきます。とにかく、感染予防の手洗いうがいの徹底、症状がある場合は速やかに医療機関に連絡すること、そして、政府も嘘偽りない発表をした上で、感染予防を徹底していただきたい。1日も早い終息を願うばかりです。
木村好珠(きむら・このみ)
精神科医、産業医、健康スポーツ医。慶應義塾大学病院研修修了後、都内クリニック、静岡赤十字病院で勤務。現在は東北の病院にて常勤医、静岡県内の病院、 東京・金王坂クリニックにて非常勤医。アスリートへのメンタルサポートにも注力し、東京パラリンピック ブラインドサッカー日本代表のメンタルコーチを務める。