「キャッシングで借金、病院代もない」50代無職夫婦と80代老母の“八方塞がり”――「8050問題」の現実
もはや生活保護受給を考えるレベルだろう。このままでは共倒れだ。
「市役所に生活保護の相談にも行きました。でも今の家賃が生活保護の上限を超えているので、引っ越しすることが条件だと言われました。基準の範囲内の住まいなら引っ越し代も出せるというんです。生活保護が受けられれば病院代もタダになるので、今よりずっと楽になるのは間違いない。しかし、妻は引っ越しして環境が変わるともっと病状が悪くなるから引っ越しはできないと言っています。私には説得する自信もないし、実際、無理に引っ越して鬱が悪化するのは目に見えているので、難しいでしょう。結局ここで生活保護の話もストップしてしまっています」
八方塞がりとはこのことだ。いざとなれば義母という助けがあることを、小田さん夫婦も役所の担当者も見越しているからかもしれない。だが、義母だって80代だ。いつまでもあてにできるわけではない。
小田さんは、あれこれ考えることもできなくなり、「こうしなさい、と言ってくれる司令塔がほしい」と力なく笑う。
「逆玉の輿」とからかわれた幸福なときは短かった。
「父を見捨てたバチが当たったのかもしれないと、最近思うようになりました。妻と結婚できたときは、母の介護をやったおかげだと思ったのに……」
「8050問題」――50代の引きこもりや職のない子どもを、80代の親が支えるという構図が社会問題になっている。小田さんの場合、80代の親1人に対して、40から50代の子どもが3人。この現実の前に言葉も出ない。
「もっと私が死に物狂いで仕事を探すしか、解決の道はないんですよね……」
歯車はどこで狂ってしまったのだろう。それでも、一人で苦しむより、小田さんのそばに理恵子さんという家族がいてよかったと思うべきなのだろうか? 小田さんと別れてからも、ずっと考えている。