カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「ar」3月号

「ar」をブチ壊す、「LEON」編集長の言葉――女が自信を持つことは「俺たちにモテるため」ではない!

2020/02/28 16:00
島本有紀子(ライター)
「ar」2020年3月号(主婦と生活社)

 3月号の「ar」(主婦と生活社)は「ALL WE NEED IS LOVE!!! 好きこそすべて」と題した「LOVE特集号」。異性モテより“自分モテ”を提唱している「ar」らしく、今号の「LOVE」も、誰かに与えるものではなく、惜しみなく自分自身に向けるものとして捉えられています。

 特集ページ冒頭には、「みんなから浮かないとか、誰かが持ってるからとか、そんな理由じゃなくて。(略)なんだかわからないけど、胸がときめく! そんな自分の“LOVE”をもっと大切に。だって、“好き”は私たちにとって最高の自分アゲ剤」とのお言葉が。自分アゲ剤、なんと素敵な響きでしょう。沢尻エリカやマッキー(槇原敬之)にも違法じゃない自分アゲ剤があればよかったのになあと思ったところで、今月号の中身、早速見ていきましょう!

<トピックス>
◎LOVE充な女になる10のこと!!
◎イケメン美容師ときめきTONIGHT
◎令和的男子図鑑

「LEON」編集長がブチ壊す

 最初に見ていくのは、巻頭特集「女の子サイコー(ハート) LOVE充な女になる10のこと!!」です。同誌いわく、「LOVE充」とは「全身いっぱいにあふれるほどの愛を持ってる」状態のこと。そして「LOVE充10か条」その1は「まず、自分が大スキ!!」だそうです。ドラム式洗濯機の傍らでショーパン姿の佐藤栞里と宮田聡子がポップコーンをつまむ平和な写真に、「LOVE充オンナは自己愛にも満ちてて当然!」「いつだって自分が自分の一番の味方」「自己肯定感、高くて損なし」との解説が添えられています。なんてハッピーな考え方。

 10か条はほかに「鏡大スキ(ハート)」「全力で休む!」「昨日よりいい女になった! と毎日思える(ハート)」など。最後のページでは、やや唐突に詩人・中原中也の言葉「天才とは、自分自身であつた人のことだ」まで引用され、これはファッション誌ではなく自己啓発書なのでは!? と思うほど、自分を慈しむことの大切さを超ポップに伝えてきます。

 お気楽すぎる感もありつつ、もしも自分に娘がいたら、こんなふうにハッピーにポップコーンをつまみつつ、自信満々でただただ明るく生きてほしい! という希望のような気持ちが湧いてきて、まさに“自分アゲ剤”な企画でした。

 ただ、これは蛇足ではと感じたのが、オジサンファッション誌「LEON」(主婦と生活社)の男性編集長からのコメント。要約すれば“異性に媚を売る女と、謙虚すぎる女はモテないぞ”というもの。モテるのは「自分とその周りの環境が好きな女性」であると説き、「そんな女性が増えたら、ボクらの人生も、もっと楽しいだろうなぁ」と結んでいます。このコメントがあることで、LOVE充マインドも結局、男性からは“俺たちにモテるための行為”として捉えられてしまうのか!? と思わされ、企画の軸がブレてしまったような。そもそも、「ボクらの人生」くらい自分で楽しくしてくれよ……「ar」読者を見習って、“自分アゲ剤”を自分で調達してくれよ! とツッコみたくなりました。

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