コラム
しまむら再生の道は

しまむら苦戦、「しまパト」も困難に? 「ユニクロを参考に」停滞を打破するための4つの検討

2020/02/25 11:40
南充浩

 そんなしまむらが復活するためには、いろいろな方策が考えられます。思いつくままに挙げてみましょう。

1.ブランドステイタスの向上
2.商品の構成の見直し
3.情報発信の工夫
4.ネット通販の早急な整備

 まず「ブランドステイタスの向上」については、ユニクロが参考になるのではないかと思われます。ユニクロが「ダサい」「安物」と言われていたのも今は昔。「+J」「ユニクロU」など、世界的な有名デザイナーとのコラボレーションラインを定着させ、ステイタス性を向上させています。今ではユニクロをバカにする人はほとんどいません。しまむらも一時期「しまラー」ブームで、ファッション性をアピールし始めましたが、残念ながら尻すぼみに終わっています。有名デザイナーとのコラボだけが正解とは思いませんが、「しまラー」を再現できるようなファッション性の強い打ち出しは必要でしょう。

 次に「商品構成の見直し」で、ここが最大の課題かもしれません。先ほども書いたように、メーカーの売れ残り品では5000億円を賄えないことを踏まえ、「商品の調達法」を確立させるべきです。また、「売り切れ御免」時代の名残なのか、しまむらは「目玉商品」がわかりにくいのが特徴。そのために「しまパト」という消費者のリサーチ行動を生み出し、これが躍進を支えたわけですが、多くの人は年がら年中「しまパト」をできるほど暇ではありません。それに「行ってみるまで何があるのかわからない面白さ」というのは、マスには伝わりにくいと言えるでしょう。過去の「裏地あったかパンツ」のように、多くの人に認知される目玉商品を毎シーズン投入し、告知する必要があります。

「情報発信の工夫」についてですが、これもユニクロやジーユーをはじめとする各社の低価格ブランドに比べると後手に回っていて、存在感が薄まっていると感じます。ウェブ上で流れてくるしまむらの情報は「業績面で苦戦している」という内容ばかりで、これではマイナス効果しか生みません。今は低価格品といっても情報発信が重要ですし、ウェブを使えばマスメディアに頼らずとも、自社発信できるのに、それをほとんど活用できていない印象です。その結果、ユニクロはもとより、ほかの低価格ブランドよりも消費者の認知が希薄になってしまっているので、火急に改善すべきでしょう。

 最後に「ネット通販の早急な整備」ですが、この点をめぐっては、経営陣の認識自体が根本から間違っていると感じられます。18年7月、しまむらはファッション通販サイト「ZOZOTOWN」への出店に乗り出した(19年6月退店)ものの、筆者も含めて業界関係者は誰もが首を傾げていました。漏れ伝わるところによると、出店理由は「ネット通販の練習のため」だったとされています。しかし、ファッションビルのように、テナント出店させるECモールの「ZOZO」に、たとえ何百年出店し続けたとて、ノウハウが異なる自社ECサイトの練習にはまったくなりません。その時点で、経営陣のネット通販への見識の低さが露呈していたと言えます。

 筆者は「ネット通販の拡大が何よりも重要」とは考えていませんが、ネット通販には商品カタログとしての機能があります。それを見て、商品を強く認識する消費者も、実際に店舗に行って商品を買う消費者もいるのではないでしょうか。逆に「低価格」という売りを言い訳のように使い、「ネットで商品をどう見せるか」に注視してこなかったことが、売上高減少というより「買い上げ客数の減少」として跳ね返っていると言えます。

 筆者が思いつくことは、どれもこれも地味なことばかりですが、アパレルビジネスにおいて一発逆転の満塁ホームランというのは存在しません。苦境にあるしまむらには、コツコツとヒットを重ねて着実に点を積み上げていくことが必要なのではないでしょうか。
(南充浩)

最終更新:2020/02/25 11:40
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