原液100%美容液の99.8%は水!? コラーゲンは塗っても食べても効果ナシ! 上原恵理先生が斬る
――では、低分子化させた「ナノヒアルロン酸」や「ナノコラーゲン」であれば、浸透するでしょうか?
上原 確かに、分子量的に通るかもしれませんが、通過したところで、小さいヒアルロン酸やコラーゲンが大きい分子と同様の働きをするかというと、疑わしいです。例えば、ベッド用マットレスのスプリングがへたった時、細かく裁断したスプリングを大量に入れても、弾力性は復活しませんよね。それと同じです。
――結局、スキンケアコスメにヒアルロン酸やコラーゲン、プラセンタが含まれていても無意味なのですか?
上原 蒸発してしまう水分をキープするという意味では、“保湿効果”はありますが、それだけ。「肌の奥に浸透して、肌に存在するコラーゲンやヒアルロン酸を本来の状態に再構築する」と思っている人が多いようですが、それは誤解なので覚えておいてください。また、美容皮膚科でも、肌にヒアルロン酸やコラーゲンを “肌に入れる”というアプローチはせず、医療機器や医薬品を用いて、生成を促進するという治療法を取ります。医療でも、“間接的”にヒアルロン酸やコラーゲンを増やしているのですから、市販の化粧水で効果を得られたとしたら、プラセボ効果でしょう。
――通販などで「原液100%」と書かれた、いかにも効果がありそうな美容液も、意味がないってことなんですね……。
上原 もちろん! 原液をボトルリングしたようなパッケージですが、クリニックが使用する医薬品とはまったくの別物です。
スキンケア用品は「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」により、全成分を配合量の多いものから記載するという決まりになっています。実際に「原液100%」を謳っている商品の成分を見てみると、最初に書かれているのが「水」で、美容成分は全体の“約0.2%”だけってことも。法律上、材料メーカーから出荷された美容成分に、化粧品メーカーや工場が手を加えなければ、比率関係なく「原液100%」と表記しても問題ではないんです。
ただ、消費者はまさか0.2%しか入っていないなんて思わないでしょう? 「原液100%=プラセンタエキスだけ」と思い購入したとして、99.8%が水でできているって違和感を覚えませんか!? 「100%=効果が高い」というような消費者の思い込みを利用し、法律の網をかいくぐっている製品が許せないですし、私は怒り狂っています!
インフルエンサーは医学の知識がない素人
――最近はインフルエンサーや口コミサイトなど、一般人の感想を参考に商品を選ぶ人も少なくないですよね。今こそ、消費者一人ひとりが正しい知識を持たなければいけないと感じました。
上原 今は正しい情報を探すのが大変なくらい、誤った“美容の常識”で溢れています。例えば、化粧水にせよ乳液にせよ、「濃密な方が効果もある」と思い込んでいる“こってり信仰”も一概には良いとは言えません。実際、“こってり”させる成分が邪魔をして、有効成分が皮膚に浸透しないってこともあるんですよ。
インフルエンサーは医学の知識がない素人です。彼女たちは、良い製品を見極める知識があるわけでもなく、“仕事”として商品をアピールしているだけなので、そのからくりや危険性に気付いてほしいです。私たち医者は医学部で6年学び、国家資格の医師免許を取得。そして現在でも新しい情報を得るために勉強し続けています。また、クリニックで新商品を導入する際は論文を読み、効果や安全性を確かめているので、インフルエンサーのように根拠のないものは勧めたりしません。ただ、最近はそのような、ステマドクターもいるので……信頼できる医師や正しい美容知識を、消費者自身が見極める力が必要です。
美容皮膚科・外科に高額なイメージがあって、ハードルが高いと感じるのもわかりますが、カウンセリング時に予算を相談することもできます。月1~2万円代の施術もありますし、効果がわからないデパコスよりよっぽど安上がりなのでは。もうちょっと我々を信用、そして頼ってくれたらうれしいです(笑)。
上原恵理(うえはら・えり)
2006年群馬大学医学部医学科卒業後、同年東京大学医学部附属病院研修医として勤務。08年に東京大学形成外科医局、10年帝京大学医学部附属病院を経て、18年より表参道スキンクリニック勤務。豊胸や乳房再建の最先端術式を数多く手掛けており、美容外科医の目線から、症例や美容法に切り込んだSNSが話題に。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)や多数メディアに出演するなど、活動の場を広げている。
表参道スキンクリニック表参道院
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