『ザ・ノンフィクション』農家の嫁の反抗期『私って嫁ですか 妻ですか ~農家に嫁いだ友紀子の結婚~』
見たところ岩立夫婦は「猪突猛進で我の強い妻・友紀子と、穏やかで辛抱強い夫・昌之」という構図に映るし、大体の場面ではそうなのだろう。しかし友紀子にだって夫への不満がある。
友紀子は夫婦間の家事負担について、昌之が担当するはずの家事を行わないため、結局、自分がしていると番組スタッフに話していた。さらに妊活は、当初は自然妊娠を考えていたものの、友紀子が「この日だ」という日を夫に伝えても、今日は無理、疲れたと協力してくれず、それで人工授精になったのだという。
妊活関係の記事を読むと、「いかに夫のプライドに抵触せず、その日その気になってもらうか」といったものが多い。しかし、そんな妻側だけの努力でいいのだろうか。しかも、岩立夫妻の場合は友紀子ではなく、昌之が子どもを望んでいるのだ。それなのに、「今日は無理」との理由で、手間も費用も、そして友紀子の体にも負担がかかる人工授精を4度も行っている。これでは友紀子の気持ちが妊活から離れ、ゲストハウスという新規事業に向くのも仕方ない気がする。
感情をあらわにする友紀子のワガママは目立つが、一見穏やかな昌之の「いつの間にか家事負担は妻の方へ」「妊活時の『今日は無理』」というワガママは見えにくい。そしてこれらは昌之固有のワガママというより、少なくない男性が共通して持っているワガママともいえるのではないだろうか。
こうしたワガママの根底には、少なくない男性が意識的/無意識的に持つ「面倒なことは女がやればいい」という考えを感じさせる。夫たちは、おそらく自分がワガママを言っている自覚すらなく、むしろ妻がうるさいことを言っている程度にしか思っていないのではないか。夫たちのこうした態度に、イラついている妻たちは多いだろう。昌之のこうした無自覚に対し、友紀子が腹を立てることに関しては、大いに応援したい。
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