新宿駅「首つり自殺写真」をSNS投稿――弁護士が「プライバシーの侵害では?」の疑問に回答
1月6日の正午過ぎ、JR新宿駅南口の歩道橋にて、男性がマフラーで首をつって自殺を図り、心肺停止状態となって、搬送先の病院で死亡が確認されるという事件が起こった。新宿駅という土地柄、多くの人が現場付近に居合わせたとみられ、SNS上では目撃情報が相次いだほか、中には、首をつっている人物の写真まで散見されたのだ。
これに対し、ネット上では「撮影するだけでもあり得ないのに、それをSNSにアップするって信じられない」「モラルはないのか」「人間のやることではない」などと怒りの声が噴出、また、「見たくないのに、Twitterに写真が流れてきて見てしまった」と動揺する声もあった。さらに、昨年10月、JR新宿駅のホームで人身事故が発生した際、救出活動を行っている様子をスマートフォンで撮影する人たちが現われ、「お客さまのモラルに問います。スマホでの撮影はご遠慮ください」という異例の放送が流れたことを振り返りつつ、「最近こういう野次馬が多い」と嘆くコメントも見受けられた。
そんな中、ネットユーザーの間からは、「プライバシー侵害ではないのか?」といった疑問も飛び出しているが、果たして実際のところはどうなのだろうか。今回、山岸純法律事務所の山岸純弁護士に解説してもらった。
「死者」にプライバシーはあるのか
プライバシーの侵害とは、通常であれば他人に知られたくないような個人の情報をコントロールする権利を侵害することを指すという。刑法上の犯罪行為にはならないが、民事上の損害賠償の対象となるそうで、今回のケースに関しては、「プライバシー侵害にはあたらないでしょう」と山岸氏は言う。
「なぜなら『死者』にはプライバシーがないからです。しかし、写真にあえて『ウソの情報』……例えばウソの自殺原因などを付け加え、SNSで拡散した場合は、『死者に対する名誉毀損罪(刑法230条2項。3年以下の懲役など)』が成立する可能性があります」
ただし、この「死者に対する名誉毀損罪」は、遺族による「親告(犯人を罰してくださいという意思)」があって、初めて罰せられるものだという。
「写真だけではなく『ウソの情報』が拡散された場合、刑事罰のほか、『遺族の名誉感情』が害されたものとして、民事上の損害賠償責任を負う場合もあります。この場合の慰謝料は、その『ウソ』がどの程度のものかによるでしょう」