2019年のK-POPシーンを振り返る――日本語楽曲のクオリティが急上昇、EDMはジャンル定着
このキーワードを見て「ああ……」とならない方はいないぐらい、脱退や活動休止の多い年でした。年始のバーニングサン事件に関連するBIGBANGのV.I.の脱退から始まり、さまざまな理由で色々なグループのメンバーが脱退したり活動休止したり……。
個人的に、物事や人の考えは常に変わるものと思っているので、本人の意思でグループを離れることやグループが解散になることは全然アリだと思う半面、大衆からの評価などが多分に影響してくる仕事の性質上難しいなと思うところもあります。
年末に来日したLim Kimのインタビューで、「K-POPの女性ソロ歌手に対する画一的なイメージがあり、なぜ私をこう見るのだろうと思った」「以前の活動を通して私を好んでくださっていたファンの方や、私が積み重ねてきたキャリアというのは私の物ではなかった」(自分のやりたいことができていたわけではないという趣旨)と答えているのを見て、もちろん一般的にアイドルというのは演じることがメインで作詞や作曲ができなくても成り立つものですが、「音楽をやりたい」という意思のある人たちにはそれができる環境があればより良いと思います。
実際にここ3〜4年は「自給自足アイドル」という固有名詞も出てきているように、制作を実現しているグループも数えられないほど出てきています。ですが一方では、アーティスト本人たちへの負担は昔に比べ計り知れないほど大きくなり、韓国の完璧主義の風潮が悪い方向に働き、心身ともに影響が出ている人たちも見受けられます。
もう少しマクロ的な視点で見ると、個人的にはフットワークが軽く新しいことをやるのに向いている新陳代謝の良い国だと感じますが、何かを長く継続してやるという文化が日本に比べるとあまりなく(それが良いのか悪いのかはまた別の話)、短期間に根を詰めてやるのには支障がなくても、長く続けようとするとどうしても影響が出て、今のような状況になっているようにも感じます。社会としても日本と比べると突然何かが決定されるようなことが多いため、遠くのスケジュールなどを見越せず、中長期的なビジョンを持ちづらく、ほとんどの事務所は会社の規模が小さく体力が持たないという点もあると思います。どうしても世の中の動きが速いため、今アピールできないとチャンスを逃してしまうという焦燥感が強くなることもわかりますが、多様な価値観を重視し、さまざまな活動形態でアーティストとして活動していけるような未来が来て欲しいです。
前述のLim Kimのインタビューにもあるように「アイドルだからこうなんでしょ」という固定観念が強く、そこから一歩でも道を踏み外すと強いバッシングを受け、日本に比べると流行に一辺倒で多様性に許容が少ない傾向を感じます。先程の日本活動の部分に関係しますが、その点、音楽ジャンルに関して日本はどんなものでも幅広く許容する土壌があり、韓国でやることが難しいようなものでも受け入れられる可能性があるかもしれないので、もちろん韓国で何でもできるのが一番だとは思いますが、せっかく日本で活動するなら、その部分を生かしたことができると良いのかなと思います。
12月分の紹介したい1曲‖Stray Kids – Gone Days
日本語含め8カ国語で字幕がついてるので是非字幕をオンにして見てみて下さい。韓国は日本以上に上下関係が厳しく上の人の言うことが絶対の世界なので、そんな背景を思いながらこの曲を聴いて泣きました。
<近況>
皆さんにとって2019年はどんな年でしたか? 私は本厄でしたが実家の犬に腕を噛まれたりソファに足を強打して薬指が腫れたぐらいで、その代わりに申し込む公演全てのチケットが当たるという謎な年でした。
そして冬っぽいなと思う曲を詰め込んだDJミックスを作ったので(一部のクリスマス曲はもう季節外れ感ありますが……)、是非聴いてください!
e_e_li_c_a
1987年生まれ。18歳からDJを始めヒップホップ、ソウル、 ファンク、ジャズ、中東音楽、 タイポップスなどさまざまなジャンルを経て現在K-POPをかけるクラブイベント「Todak Todak」を主催。楽曲的な面白さとアイドルとしての魅力の双方からK-POPを紹介して人気を集める。
Twitter @e_e_li_c_a TodakTodak
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