ドラマ評論家が選出、2019年「配信オリジナル作品」ベスト3! 『全裸監督』で埋もれた佳作は?
――『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ』(宝島新書)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、2019年の配信オリジナルドラマからベスト3を選出。『全裸監督』以外にも注目作が並んだ。
2019年の夏にNetflix(ネットフリックス)で配信された『全裸監督』が話題になったことで、定額制動画配信サービスで作られたオリジナル配信ドラマに注目が集まりつつある。有料という敷居の高さがあるため、配信サービスが完全に定着するのはまだまだ先という意見も少なくないが、『全裸監督』のヒット、そしてジャニーズアイドル・嵐の活動休止の背景を追ったドキュメンタリーシリーズがNetflixで独占配信されたことで、以前よりも加入者の増加は間違いないだろう。
そんな「テレビから配信へ」とプラットホームが移りゆく19年において、『全裸監督』以外で印象的だった国内制作の配信ドラマを3本挙げてみたい。
『夫のちんぽが入らない』(Netflix、FOD)
まずはNetflixだが、『全裸監督』以前にも良質で見応えもある作品は多数作られていた。ただ、海外マーケットを強く意識して作られた作品というと『全裸監督』のみだと言えよう。又吉直樹の小説をドラマ化した『火花』も、昨年話題となった学園ドラマ『宇宙を駆けるよだか』も優れた作品だったが、「邦画やテレビドラマの良質な作品がNetflixでも見られる」もしくは「テレビで放送することが難しい作品を緊急避難的に配信で放送している」という“撤退戦”に見えてしまうのがつらいところだ。
今年配信された『夫のちんぽが入らない』も良質な作品だったが『全裸監督』に比べて話題にならなかったのは、良質な邦画を配信で見ているという感触が強すぎて、Netflix配信ならではのオリジナルドラマを打ち出したというイメージが薄かったからではないかと思う。
NetflixとFOD(フジテレビオンデマンド)で配信された本作は、主婦の作家・こだまの自伝的小説(扶桑社刊)をドラマ化した物語。出版された際に、センセーショナルなタイトルが話題になったことを覚えている方も多いかもしれないが、物語は夫婦の性生活(タイトルの通り、旦那の男性器が大きすぎて挿入できない)の不一致と、子どもができないことに悩む妻の姿を描いたものだ。
主人公の久美子を演じた石橋菜津美は200人のオーディションで選ばれた女優で、劇中で濡れ場も披露した。監督は『ふがいない僕は空を見た』のタナダユキ。劇中にはタナダが得意とする日本的な悶々としたいやらしさが充満している。印象が若干地味で『全裸監督』の盛り上がりに埋もれてしまった感はあるが、とても見応えのある作品である。