「賞味期限切れ」「主演は無理」映画関係者が選ぶ2019年“大コケ映画”4作品とは?
2019年も数多くの映画が公開され、実写邦画では4月19日に上映開始した『キングダム』が興行収入57億円(興行通信社調べ、以下同)を突破するなど大ヒットを記録。しかし、話題性はあったものの、“大コケ”した作品も少なからず存在するようだ。そこで映画業界の関係者に、特に印象に残っている「大コケ作品」を振り返ってもらった。
「Kis-My-Ft2・玉森裕太が主演を務めた『パラレルワールド・ラブストーリー』(5月31日公開)は、人気作家・東野圭吾氏の同題小説を実写化したもので、玉森のほかメインキャストには染谷将太、吉岡里帆が名を連ねました。全国316スクリーンで公開され、初週末の映画ランキングは4位を記録したものの、興行収入は4.8億円という結果に。話題性や上映規模から考えても、興行収入10億円は目指したかったでしょう」(映画誌ライター)
ネット上に書き込まれたレビューを見ると、「原作ファンですが、複雑な世界観を映像化するのは難しい」「ラブストーリーなのかミステリーなのかハッキリしない、中途半端な感じだった。だから薄っぺらい印象」「玉森に主演は無理」といった低評価が寄せられていた。
「次は、人間を食らう種族“喰種(グール)”が潜む東京が舞台の『東京喰種 トーキョーグール【S】』(7月19日公開)。窪田正孝が主演を務め、全国292スクリーンで上映スタートして初登場7位を獲得後、2週目にはランキング圏外に。興行収入は3.2億円でした」(同)
原作は石田スイ氏の世界的人気漫画(集英社刊)で、17年には映画第1弾『東京喰種 トーキョーグール』が公開されていた。主演はその前作も窪田が務めたが、ヒロイン役は1作目が清水富美加(現在は法名・千眼美子として活動)、2作目は山本舞香に変更。清水は17年2月に宗教団体「幸福の科学」への出家を発表しており、当時、彼女が「人肉を食べる人種の役柄など、良心や思想信条にかなわない仕事」に悩んでいたことも明かされ、ネット上で「『東京喰種』のことではないか」と指摘されていた。
「そんな騒動を経て、映画は2作目公開に至ったものの『ヒロインは清水の方が良かった』『いろんな意味で清水の印象が強い』といった声が続出。また、『ストーリーや映画のクオリティーも含め、1作目の方が魅力的』『2作目は主演の窪田くんも影が薄いし、全体的に物足りない』などとも言われていました」(同)
一方、話題性があったにもかかわらず、初週末の映画ランキング圏内にすら登場しなかった作品も。それは、高橋一生と川口春奈がダブル主演を務めた映画『九月の恋と出会うまで』(3月1日公開)である。
「作家・松尾由美氏の同題恋愛小説(双葉文庫刊)を映像化した同映画は、全国248スクリーンで公開され、トップ10入りを狙うには十分でした。また、公開にあたり高橋と川口がさまざまなテレビ番組で宣伝していたこともあり、さすがに初週くらいはトップ10入りできたはずですが、残念ながら初登場11位。その後、巻き返すこともなく、最終的な興行収入は1.8億となりました」(マスコミ関係者)
ネット上には「よくあるラブストーリーって感じだった」「SF要素がややこしい。原作読んでないと難しいかも」といったレビューもあったが、作品自体そこまで“酷評の嵐”だったわけではない。となると、なぜ客足が伸びなかったのか……。
「業界内では“高橋の集客力低下”が指摘されていました。高橋は15年放送の連続ドラマ『民王』(テレビ朝日系)や、17年の『カルテット』(TBS系)で女性ファンを増やしてブレーク。しかし、この遅咲きイケメン俳優枠では18年に『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で主演を務めた田中圭、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』や『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)などに出演した中村倫也が大ブレークし、その間には高橋に熱愛報道もあったためか、人気の勢いがストップしてしまいました。『九月の恋と出会うまで』のターゲット層は女性とみられますが、制作側が期待したほど、高橋の固定ファンが残っていなかったのか……いわば“賞味期限切れ”と言えるでしょう」(同)
そんな『九月の恋と出会うまで』よりも興行収入が得られなかった“大爆死”映画が、三吉彩花が主演を務めた『ダンスウィズミー』(8月16日公開)だ。
「同映画は、『ウォーターボーイズ』(01年)などを手掛けた矢口史靖氏が、監督・脚本を担当したミュージカルコメディー。主演の三吉は、かつてアイドルグループ・さくら学院に在籍し、近年は女優業を中心に活動していますが、同年代の女優たちと比べると、まだまだ存在感が薄い印象。『ダンスウィズミー』はそんな三吉のほか、女性芸人のやしろ優や、シンガーソングライター・chayなどが出演していました」(同)
一応、三浦貴大やムロツヨシなど認知度のある俳優も出演していたが、「話題性もなければインパクトにも欠ける、“地味”な顔ぶれ」(同)に見えるという。
「“ミュージカルコメディー”という点に置いても、『ミュージカル映画というわりに、ダンスシーンが少ない』『日本映画でミュージカルをやろうとすると、やっぱりチープな感じになる』など厳しい評価が寄せられていました。映画ランキングでは初登場10位を獲得しましたが、全国305スクリーンという上映規模に対して、最終興行収入が1億円というのは、間違いなく“大コケ”と言えるでしょう」(同)
20年もさまざまな映画が公開される予定だが、不名誉な記録を塗り替える作品がどれだけ生まれるのだろうか。