【連載】スピリチュアルウォッチャー・黒猫ドラネコの“教祖様”注意報

「お金の神様に可愛がられる」? 藤本さきこ氏、ビジネス指南に見せかけた“スピリチュアル本”の実態

2019/12/06 21:00
黒猫ドラネコ(ライター)
『お金の神様に可愛がられる手帳』(KADOKAWA)

 誰にでも、心が弱ってしまう時はあります。救いを求める先が、信頼できる家族や友人ではないこともあるでしょう。「こうすれば幸せになる」と語りかける心理カウンセラー、スピリチュアリスト、霊能力者。彼らを見ていると、「私を救ってくれそう」「この人たちのようになれるかも」と、次第にそんな気持ちが膨らみ……ちょっと待って! それ、本当に信じて大丈夫? スピリチュアルウォッチャー・黒猫ドラネコが、無責任なことばかり言っている“教祖様”を、鋭い爪でひっかきます。

 書店やバラエティショップに、来年の手帳コーナーができる時期ですね。私は毎年「どんな自己啓発系やスピリチュアル系“教祖様”が手帳を出しているかな?」と、楽しく観察しています。もちろん今年も大注目なのは、「月収10万円のシングルマザーが短期間で年商3億円の実業家に」でおなじみ(?)、KADOKAWAから『お金の神様に可愛がられる手帳』を毎年発売している、藤本さきこさんです。

「300万円一括払い」で“覚悟”を確認する教祖様

 藤本さんは1981年生まれ、青森県出身。怪しいスピリチュアルの代表格、子宮委員長はる(現・八木さや)と同郷です。さらに、“布ナプキン”などの女性向け商品を取り扱う共通点もあってか、子宮委員長とは2015年頃から付き合いがある様子。しかし、残念ながら最近は絡みがないことも、藤本さんのブログからうかがえます。とはいえ、彼女はまさに「子宮系」から派生した「スピ系自己啓発」で大きく稼ぎ、大手出版社の後ろ盾を得て派手な宣伝をしている、代表的な“教祖様”の1人でしょう(そういえば、KADOKAWAは子宮委員長の本を2冊出版していますね)。

 「藤本さきこ認定講師」、すなわち「“教祖様”からお墨付きを得て商売ができる権利」を獲得するために必要な金額は、全6回のセミナーで300万円(税込)。このセミナーでは、藤本さんから直々に「勝ち負けのない対等の世界」「繁栄拡大の世界」(って何?)を学べるそうで、全6回すべて受講しないと、認定講師にはなれません。

 藤本さんはこの金額設定について、今年4月30日のブログで「『絶対に受けたい』と志願する姿勢を整えるためでもあります」と説明しています。この前日29日のブログには、「世の中には基本的に『愛』か『不足』か、のベースしかないのですが 『支払わなくちゃ』がベースにあると、どうしても『愛』ベースで受け取れないんです」という理由から、基本的に“一括払い”でのみ受け付けるとの記載も。どうやらこの300万円は、単純な講習料だけではなく、藤本さんの認定講師になりたい人が、彼女に“覚悟”を見せるための金額でもあるようです。


 実際、どんなことを教えてくれるのだろうかと、藤本さんの著書『お金の神様に可愛がられる方法』(KADOKAWA)を読んでみました。お金を増やす方法や、節約術が具体的に書かれた“ビジネス指南”かと思いきや、そんな内容はほとんど見当たりません。それに、私が読み飛ばしてしまったのか、この「神様」の正体が最後までよくわからないのです。それでも藤本さんは、お金を増やすためには「お金の神様に可愛がられる」ことが大事だと主張し、読者にもそれを勧めます。「感覚を信じて『私の世界(背景)を変える』と決めれば、宇宙のエネルギーが自分の中に入ってきます」という、謎の説明も。「お金の神様も宇宙そのもの」といった記述もあり、「じゃあ『宇宙に可愛がられる』ってことなのか?」と、私の思考回路はショート寸前。前回の連載で、「まだ見ぬ不思議なものから『力を与えられた』と言うと、なんでも“スピっぽく”なる」という話をしましたが、藤本さんがやたらと「宇宙」を持ち出してくるのも、まさにコレでしょう。

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