「フェミニストって、なに?」座談会【前編】ネットでヒステリックで怖いと言われるのはなぜ?
―― Twitter上で「フェミニスト」と名乗る人の中には、男性嫌悪や男性への性差別を主張する人もいますよね。
宮越 「ツイッターレディース(※1)」と呼ばれる人たちが数年前から「男児を間引け(※2)」って言い始めた時はさすがに「それは違う」とリプライを送りました。ただ、男性嫌悪をTwitterに投稿する人たちにもそれぞれ背景があるということは考えないといけない。もしかしたら、長い間男性中心社会の中で苦しんできたがゆえに、「男ってクソ」「男女平等とかきれい事は言いたくない!」というミサンドリー(男性嫌悪)的な投稿をしているのかもしれないし。
※1ツイッターレディース……インターネット上に存在する「過激派フェミニストの一種」と言われている
※2男児を間引け……男性嫌悪の思想から、男児を男性というだけで排除しようする考えから出た言葉
相川 ミサンドリーって男嫌いっていうことじゃないですか。でも社会って別に女性に優しくない。極端に言えば、社会は女性のことを嫌いだから、レイプ被害にあった女性へのケアはおろそかになったり、経済格差も生れるなど、女性側にいろんな不利益がある。「女嫌い」の社会は受け入れられて、「男嫌い」という言葉に過剰反応することは、とてもおかしいと思いました。
赤谷 やっと、ジェンダーに対する“もやもや”が議論に上がるようになってきたと思っています。今はとにかく、個人の中に溜まっていた「怒り」を表現する時期なのかな。理不尽さへの怒りが「バン!」と吹き出す黎明期みたいな。SNSは良い意味でも悪い意味でも、日本のジェンダーに対する不満や怒りを可視化させた。悪い意味というのは、Twitter上のやりとりだけでは、複雑な論点を抱えた案件について、議論が深化しにくいから、罵り合って終わり、みたいなパターン。これは多いですよね。
KIKI ほかに表現できる場所がない。学校とか会社で議論が進んでいたらここまでTwitterは極端な形で盛り上がっていないかもね。
宮越 興味がない人の間では話しにくいもんね。ただTwitterって二元論になりがちで。例えば、そういった理由から「性別二元制を乗り越えよう」という話は広まりにくくて、トランスジェンダー(※3)やノンバイナリージェンダー(※4)の人が不在になったり、差別されやすい問題があると思う。
※3トランスジェンダー……性別越境者。生まれた時に与えられたジェンダーと違うジェンダーのあり方で、生活することを選んでいる人。
出典:『トランスジェンダー・フェミニズム』(著:田中玲 インパクト出版会)
※4ノンバイナリージェンダー……自身のジェンダーを男性、女性といった、既存の性別のどちらかに限定しない考えを指す。いわゆる「第三の性」と呼ばれている。
KIKI こうやって直接話すと、「でも、そこは違うよね」といった感じでグレーゾーンを話す隙がある。Twitterだとそれができないし、私なんか違う意見が飛んできた時に顔が見えないことで攻撃性を感じてしまって、憎悪の感情が煽られるんですよ。論理立てて反論できる人はTwitterをやればいいけど、私は無理だからほかのところでやろうという気持ちになってます。
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